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医仁会 武田総合病院 脳神経外科部長 川西 昌浩

セメント治療

医仁会 武田総合病院 脳神経外科部長 川西 昌浩

高齢社会を迎え、また、日本人全体に肥満や慢性的な運動不足から骨粗しょう症になる患者さんが増えています。手足や腰の骨がもろくなることによって、簡単に骨折を招き、結果的に寝たきりになってしまうことも多いのです。専門医の医仁会武田総合病院脳神経外科部長の川西昌浩氏に症状や治療法をお聞きしました。

私の祖母は80歳で脳梗塞から寝たり、起きたりの状態なのですが、先日来、何かの拍子でお尻から畳の上に落ち、「痛い、痛い」と顔をしかめます。専門医に診てもらったほうがいいでしょうか。

患者さんを拝見しなければわかりませんが、お話では背骨の圧迫骨折を生じている可能性が高く、専門医の受診をすすめます。この際、レントゲンのみでは古い骨折なのか新しい骨折なのかわかりにくいこともありますので、できればMRIをとってもらうことをおすすめします。圧迫骨折は、お年寄りが尻もちをついた後やひっくり返ったときに起こることが多いと知られていますが、単に中腰になったとき、体をひねったとき、くしゃみをしただけでも起こることがあります。ときにまったく、誘因がわからず、本人が知らないまま、折れていることもあります。すなわち、はっきりとしたけがが原因の骨折(外傷性)と、明らかなけががなく日常の生活を送っているだけで折れている骨折(専門的には脆弱性といいます)があります。後者は、誘因なく、急な腰痛、背中の痛みだけを患者さんが訴えるので、注意が必要です。

骨粗しょう症とはどんな病気なのですか

一言でいうと、骨がすかすかになった状態といえます。骨は固いので、一度つくられると変化しないようにみえますが、実際は絶えず活発な新陳代謝をしています。すなわち、骨は大人になって完成しても毎日壊れて、また作られるという状態が続いています。皮膚などと同じで、丈夫でしなやかな骨を保つためには、古い骨を壊し、絶えず新しい骨につくり変える必要があるのです。ちょうど人口移動の激しい町を連想していただけるといいと思います。他府県へ引っ越しして出ていく人と、またその町に引っ越ししてくる人がたくさんいるけど釣り合いがとれているのが、若いときの骨の状態です。ところがもし何らかの理由で他府県へ出ていく人ばかりで、その町に来る人がいなくなったらどうなるでしょうか。過疎化がおこりますよね。この状態が骨粗しょう症という状態です。骨粗しょう症になると、背骨はちょうど中身の空の段ボール箱状態になっていますので、簡単に変形してしまうのです。

脊椎圧迫骨折に対するセメント療法とはどんな治療ですか

圧迫骨折した背骨(脊椎)に針を刺して、そこから医療用のセメント(骨セメント)を注入して補強固定し、痛みをとる治療のことです。骨粗しょう症などが原因で、背骨が圧迫骨折を起こすと強い痛みが生じます。これまでは鎮痛剤の投与や安静、コルセットの使用が主でしたが、痛みがなかなかとれなかったり、高齢者では長期臥床による足腰の弱り、肺炎、痴呆症状が生じて問題でした。この治療では局所麻酔だけで切らずに針一本でできるので、負担は軽く、また所要時間は30分ほどです。骨由来の痛みに関してはほぼ確実にとれます。治療後の長期安静は不要で、数時間後には離床が可能となります。

入院期間と費用についてはどのくらい必要ですか

圧迫骨折の原因、症状、病変部の状態などによって個人差はあります。たいていの場合、入院・検査・手術・退院までで、4~5日程度です。特別に必要な費用などは特になく、一般的な入院にかかる費用程度です。

具体的な治療方法についてわかりやすく説明してください

治療は「CT室」で行います。CT台の上に腹ばいになってもらい、局所麻酔を行います。CTで確認しながら、背中から針を脊椎内に進めます。針が脊椎内の最適部位にあることを確認するために、造影剤を注入して撮影を行います。これで安全を確認した後、歯磨き粉くらいの柔らかい骨セメントを、レントゲンで確認しながら慎重に脊椎内に注入し、針を抜去して終了です。通常、治療は30分前後で終了します。骨セメントは約1時間で固まりますが、安全のために2時間程度、ベッド上で安静をとってもらっています。以降は歩行など自由にしてもらいます。患者さんの希望により、翌日には退院可能です。


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