※医師やスタッフの肩書き/氏名は放送時点でのものであり、現在は変わっている可能性があります。

下肢静脈瘤とは?
康生会武田病院 心臓血管外科血管外科部長 佐藤 達朗
メディカルエステは、エステサロンとどういった違いがあるのですか。
ソフィアが設立されたのは16年前の1990年です。ソフィアは形成外科や美容皮膚科の治療を補助する目的でつくられたエステで、医師の指導のもと、効果のある方法で皮膚の状態をよくしていこうということで始まりました。
先生のご専門は下肢静脈瘤ということですが。
まだそんなになじみのない病気かもしれません。人間は痛みや症状が出るまでなかなか病気だとは思いませんが、下肢静脈瘤は長い年月をかけて発症するため、病気という認識がありません。わからないうちに症状が悪化してしまう方も多いです。
下肢静脈瘤とは、足の血管がボコボコとしてくるものでしょうか。
一般にこの病気は高齢者のご婦人に多いです。ぶどう状に足の血管が浮き出てくることを想像される方も多いと思いますが、それは表面に出てきたものがたまたま見えているだけであって、足の静脈すべてが静脈瘤になる可能性があるのです。
主な原因を教えてください。
人間が大昔、4本足で歩いていたときは心臓の位置が低かったため、足の血液は雑作なく心臓へ返っていました。しかし、二足歩行になってから心臓の位置が高くなってしまい、足の血液は重力に逆らって心臓へ戻ることができにくくなり、逆流しやすくなりました。このため、人間は動物に比べ、逆流防止の弁が発達しています。ところが、この弁が衰えてくると血液が逆流しやすくなり、血管が伸びきることで静脈瘤が発生します。だいたい50~60代に発症することが多いです。静脈血には筋肉や組織で使った、二酸化炭素などの老廃物が入っているのですが、これは生体にとっては毒素であり、それが足にたまって逆流しているため、だるさや痛みといった感覚が起きます。これが若いときに発症すると、この程度の症状かなと感じてしまうため病気だとは感じないのです。
それを放置しているとどうなるのですか。
ある年齢になると少しずつ症状が出てきます。特に女性の方は閉経前後、女性ホルモンが減少してくると血管促進因子というものが肝臓から出てきて、静脈瘤が悪化し育ってしまいます。また、閉経前後には血液が血栓を作りやすくなり、それが静脈瘤の中にできると非常に痛みますし、発熱もします。そして、この年齢ではみなさん膝が悪くなってきますので、運動量が減ってしまうことも静脈瘤を悪化させる要因です。
男性はかかりにくい病気なのですか。
頻度的には男女比4対6くらいで、女性の方が少し多いかなという程度です。なぜ男性の方が少ないかというと、女性ホルモンに関する問題がないことと、病気として認識されていないということもあるでしょう。男性が下肢静脈瘤に気づくのは、不意な事故などで動けなくなったり、よく運動をしていた方が何かの理由で運動できなくなったりした時。この時に悪化し、症状が出てきます。そのため、男性にはまれな病気と思われているのです。また、男性はズボンで生活しているため、見えにくいこともあり長年温存しているという方も多いと思います。
動けない状態になると発症するのはなぜですか。
膝から下には、腓腹筋(ひふくきん)やヒラメ筋といった歩くための筋肉がありますが、これは歩くたびに収縮をしていて、同時に血液を押し上げる働きもしています。心臓が足の血液を吸い上げる力はあまり多くないです。歩くことでふくらはぎの筋肉が収縮し血液が流れているため「第二の心臓」とも呼ばれています。ですから、寝たきりになってしまうと足の血液が澱んでしまい、静脈瘤が悪化するのです。エコノミーシート症候群というのがありますが、長時間座っていることで骨盤のあたりにある一番太い静脈が完全にぺちゃんこになってしまいます。その上、足を動かさないので血液が流れず、血栓ができてしまうのです。
足の血管がボコボコしていても、痛みがあるという方は少ないのではなしですか。
下肢静脈瘤が悪化する原因は、まず血栓ができることです。血管というのは密に神経が走っているので痛みますし、抵抗力のない方は39度以上の発熱がある方もいらっしゃいます。足もパンパンに腫れてきますし、血液に老廃物が含まれているため、皮膚がかゆくなります。就寝中もかゆいため引っ掻いてしまい、皮膚に穴があいたりします。虫さされやケガの治癒が遅れ、そこから潰瘍になってしまうこともあり、ここまでくると激しい痛みを伴うのです。
潰瘍になってしまう方は多いのですか。
患者さまの1割ほどです。当院を受診される女性の方は、そこまで悪化はしていなくても、足の見た目を気にして治療に来られる方が多いですね。
日帰り手術が可能だとお聞きしましたが。
はい。下肢静脈瘤については、普段の生活をしながら治療をするのが一番です。静脈瘤は動いている限りは悪くならないと思いますし、手術をして2、3日寝込んでしまっては意味がありません。普段の生活をしながら、治療をするために日帰り手術を行っています。この手術を始めて15年が経ちましたが、術後入院される方よりも治癒が早いです。
どういった治療をされるのですか。
血管エコーを重視しており、足の表面から深い位置にある血管をすべて診てから、悪い血管のみを治療しています。静脈瘤をつくっているのは逆流している弁ですから、その弁を探し、真上の皮膚に印をつけ、4mm程度切開し、弁を切ります。そうすることで、逆流する血液が静脈瘤に流れ込まなくなり、静脈瘤自体がぺちゃんこになって、静脈瘤の一部を切除するのが非常に簡単になります。そして、血管に炎症を起こしてくっつけてしまう薬を注入する硬化療法を行います。ここで固まった血管は3~5ヶ月で消失するのです。
血管を取ってしまっても体に害はないのですか。
深部静脈が流れていない方はこの手術ができませんので、術前の超音波検査で深部静脈が順調に機能しているかをきちんと確認します。ですから、静脈瘤ができた血管がなくなっても何ら問題はありません。足が軽くなって驚かれる方が多いです。
痛みなどの症状がないまま手術された場合でも、術後、楽になったという感覚はあるのですか。
足は軽く感じます。ですが、術後は硬化療法で固めた血管が数週間痛みます。先ほどもお話しましたが、血管には神経が密に張り巡らされています。その血管が炎症を起こし固めてしまうわけですから、血管もびっくりしてしまうわけです。術後2、3週間は痛みのあるしこりになりますから、症状の無かった方が手術を受けると、初めのうちは多少辛いとおっしゃる方もいらっしゃいます。しばらくして痛みが治まってくると、足も軽くなってきますので納得していただけます。
通院は何回くらい必要なのでしょうか。
まずは初診で血管エコーの検査をして、ほとんどの場合、次の診察で手術を行います。手術は片足20~30分程度で、基本的に両足の手術をします。術後は一日だけ入浴を避けていただき、家事や仕事は当日からしていただいています。術後1週間後に外来で診察しますが、あとはだいたい月1回程度の診察で4カ月間経過を見ていきます。ほとんどの方は5回くらいの通院で治療されていると思います。
保険は適用されますか。また、この治療法はどういった方に向いているのですか。
保険で治療できます。この治療法は術後に多少の痛みがありますので、重症の方は辛いかもしれません。膝の近くでこの治療を行った方は、膝を曲げる度に痛んだりしますのでかなり重症である方にはおすすめできません。また、静脈瘤は脂肪をつける性質があるため、肥満気味の方は血管が奥に入ってしまいます。ですから、小さい切開では治療できなくなりますし、手術にも時間がかかってしまいます。
そういった方には別の治療法がありますか。
レーザー治療があります。欧米で3年前に開発されたダイオードレーザーという赤いレーザーを使ったもので、ほかにもバーコードの読み取りやCD・DVDの読み込みにも活用されています。レーザー治療と言えば、皮膚の上から照射するイメージがあると思いますが、皮膚に照射するとやけどを起こし、幹部に日光に当ててはいけない、ステロイド治療をしなければいけないなどその処置が大変です。しかし、下肢静脈瘤に使用しているレーザーは0.6mmという非常に細いファイバーが3mもありますので、足の付け根からつま先まで針を介して入れてしまいます。そして静脈瘤のあるところをダイオードレーザ-で照射すると、一瞬で静脈瘤が消失しますから、そのままファイバーを引き抜いていけば静脈瘤がきれいになくなります。この一年で250例の手術を行いましたが、術後の立ち直りが非常に早く、楽です。欧米ではこの治療法が主流だと聞いています。
この新しいレーザー治療については次回、より詳しくお話をうかがいたいと思います。







