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外来

2014年9月 KBSラジオ すこやか健康相談「脳卒中のうちでも脳梗塞について」

2014年9月に放送されました、KBS放送の森谷威夫様の番組「すこやか健康相談」でお話しした内容を掲載いたします。皆様のご参考になれば幸いです。

脳卒中センター長 滝 和郎

くも膜下出血と脳動脈瘤

脳卒中と脳梗塞はどう違うのですか?

簡単に説明しますと、脳卒中には脳に血液を送る血管がつまったり、破れたりすることで脳の症状が、突然あらわれる病気です。そのうち血管がつまる場合が脳梗塞です。つまる原因によって、脳血栓、脳塞栓、ラクナ梗塞などの病名がつきます。血管が破れた場合には、その出血した場所によって脳出血、くも膜下出血などの病名がつきます。梗塞も出血も脳の症状が、急速に現れるのが特徴です。

なるほど、いろいろなタイプがあるのですね。では脳梗塞ではどんな症状が出るのでしょうか。

顔・手足のしびれや麻痺、言葉が出にくい、目が見にくい、急な頭痛、あるいは、意識がもうろうとし、ひどい場合には、意識を失くしてしまう、などの症状がでます。万一、御家族のどなたかに急にこのような症状がでましたら、脳卒中を疑ってください。

たとえば、家族の誰かが急に言葉が出にくくなっている。脳卒中のような症状が出たらどうすればいいのでしょう?

すぐに救急車を呼んでください。先ほどご説明した、いずれのタイプの脳梗塞でも、すばやい診断と治療が効果的です。特に脳塞栓の場合、治療は時間との戦いです。

なぜ、そんなに緊急の治療が必要なのでしょうか。

血管がつまった場合を考えてみましょう。血管の役割は、酸素やブドウ糖などのエネルギー源を含む、血液を、脳の細胞に届けることです。脳の細胞は、体のなかの、いろいろな細胞とくらべて、2つの特徴があります。第一に、脳の細胞は、とりわけ傷みやすい細胞です。血管が詰まって、酸素やエネルギー源が届かなくなりますと、5分という短時間で死んでしまいます。第2に、死んでしまった脳細胞の、替りとして、周囲の生き残った細胞が、分裂して新しい細胞ができるか、どうかということですが、つまり再生するかということですが、残念ながら脳細胞は自然にはほとんど再生しないんです。これらは体の他の細胞と脳の細胞が異なっている、大きな特徴です。細胞が再生しないということは、脳卒中の後遺症の原因となります。脳の細胞ができるだけ傷まないうちに、できるだけはやく、血の流れを再開しなければなりません。

どれぐらいの速さでの治療が必要なのでしょうか

症状が出てから治療開始までの時間制限は、血栓を溶かす薬で治療する場合4.5時間、つまった血管に細いチューブ、カテーテルといいますが、これをいれて、血栓を回収する治療では8時間です。それを過ぎますと、つまった血管を再開通させる治療はかえって症状を悪くすることがあります。

血管がつまった場合については分かりましたが、血管が破れた場合も治療は時間との戦いでしょうか?

血管が破裂したら当然出血します。脳は硬い頭蓋骨に囲まれていますので出血した血液が、流れ、出てゆく所が、ありません。どんどんたまってゆく血液はたちまち脳を圧迫し、すぐに脳を破壊して行きます。出血がすぐ止まればいいのですが、持続しますと、命にかかわります。また自然に血が止まっても再出血することもあります。とくに、くも膜下出血ではこの再出血を予防するために緊急手術が必要です。できるだけ早く治療を開始し、脳を守らなければなりません。

脳卒中は後遺症が残ることがありますが、後遺症を残さないようにはできるのでしょうか?

そうですね、脳卒中で死んでしまった脳細胞の機能が、どのように回復するかをご説明します。脳細胞は木の枝のような細い突起を持っていて、この突起で近くの細胞と連絡し、ネットワークを作っています。このネットワークで脳の機能を保っています。脳卒中でたくさんの脳細胞がなくなりますとこのネットワークにおおきな穴があきます。先程もお話しましたが、生き残った細胞には、残念ながら新しい細胞を作り出す力がありません。ただなんとか突起をだし、ネットワークの穴を乗り越えて、遠くにある、他の生き残っている細胞と連絡してネットワークを回復しようと努力するのです。この補おうとする過程を手助けするのがリハビリテーションです。脳卒中のリハビリテーションは早くからはじめるほうが効果的です。脳卒中になってしまったら、後遺症が軽くて済むようにリハビリテーションに励むことが重要です。

大変な病気だということが理解できましたし、だれも脳卒中になりたくありませんよね。脳卒中の予防はできるのですか。

脳卒中になりやすい危険因子があります。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、不整脈など、おおむね生活習慣病に強くかかわっていますので、危険因子を減らすことが大事です。生活習慣を適切にし、またそれでも無理な場合は医師の診察・治療を受けてください。また年齢が40才を過ぎれば脳ドックなどの定期的な検査をうけられることも大切です。予防で脳卒中にならないようにしてください。