※武田病院グループが発行する「たけだ通信」記事からの転載です。医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

運動を継続するポイント
医仁会武田総合病院 西館5階 疾病予防センター 健康運動指導士 今井 優
最近、運動が生活習慣病の予防・改善に効果があることが知られ、日常生活に運動を取り入れる方が増えてきています。平成12年の国民栄養調査6815名の結果では、運動実施頻度が1週間に2回以上、運動の持続時間が30分以上、運動の継続期間が1年以上の、全項目に該当している方は、男性が31・9%、女性が 27・9%でした。「健康日本21」では、生活習慣病の予防に、運動習慣者の割合を、平成22年までに、男性が39%以上、女性が35%以上になることを目標としています。そして、各地域では、今まで運動習慣がなかった方を対象に、日常生活の中へ運動を取り入れるための運動教室等が開催されています。

第10回心臓リハビリテーション学会、
第5回心臓リハビリテーション指導士講習会にて(神奈川)
左より今井優、大塚潤子(講習会)、塩澤絵美子(学会発表)
、黒瀬聖司(講習会)
ご存知のように日本人の三大死因は、癌・心疾患・脳血管疾患であり、これらの疾患と関係が深い高血圧・高脂血症・糖尿病・肥満は「死の四重奏」して恐れられています。高血圧・糖尿病・高脂血症は、40歳台から急に受療率が上昇し、若年期の生活習慣の影響が危惧されています。また、これらの疾患の潜在を知らず、運動を開始すると、運動中に予期せぬ事故が起こることも心配です。運動を開始する方は、まず「メディカルチェック」(運動を始める前に、体に病気や異常がないか検査すること)を行い、健康度や体力の評価が必要です。特に、軽い病気に罹っている方や、薬を飲んでいる方が運動を開始するときは、メディカルチェックは欠かせません。
検査には、血圧測定、心電図検査、血液・尿検査などがあります。体に異常のある方や、過去に重い病気に罹ったことがある方などは、更に詳しい検査を受ける場合があります。循環器系の専門病院では、「運動負荷試験」という専門医が定めた安全基準内で、自転車エルゴメーターやトレッドミルといった運動器具を使い、除々に運動強度を増やし、「身体の生理的反応」や「運動能力」などを調べる検査を行います。この結果から、個人の一番適した運動プログラムが作成されます。
日々の運動は、安全に継続しなければいけません。運動中の事故を未然に防ぐには、運動開始前に体重・血圧測定、脈拍の確認、自覚症状(めまい・吐き気・腹痛・関節痛・頭痛・疲労感・強い息切れ・頻脈など)、変化の有無などコンディションを確認します。運動施設到着直後の血圧や脈拍は、安静時と違いがあるため、十分な休憩後測定して下さい。血圧測定の結果がいつもと違う場合、身体活動の違いや心理的に変化すること認識する必要があります。
コンディションは、前日・当日の活動量や慌てての来館、服薬忘れ、睡眠不足、環境などの影響を受けます。コンディションが悪い場合、しばらく休憩してもらい、次のような教育指導を行なうことがあります。たとえば血圧が高い時には、「血管が細くなる」、「血液量が多くなる」、「血液の粘性度が高まる」、「血管が硬くなる」などの血圧変動の原因を、「象」を用いたパネル(BOX1・たけだ通 信No. 58)で説明しています。
それではある指導経験をご紹介します。担当医師からは運動継続可否について変更指示のない方でしたが、秋頃から運動施設利用時の血圧が除々に高くなっていました。運動は、本人の希望もあり、強度を低く設定して継続しました。お正月を終え、久々に運動施設を訪れ時、以前よりも血圧が高く、10分以上の安静後も収縮期血圧が200mm Hg以上、拡張期血圧が110mm Hgを維持していました。久々の参加、体重の増加、寒冷下での来館、脳出血・心筋梗塞の既往、普段との値の違い、日頃から血圧の上昇を気にしていることなどを考慮し、医療機関の受診を勧めました。指導士の説明を受けながら約1時間休憩し、ようやく血圧は落ち着かれました。帰り際に再度受診を勧めましたが、次回の受診予定日まで様子を観ると言い帰宅されました。しかし、指導士の説明を思い返し家族と相談した結果、翌日に受診されました。そして内服薬が変更となり、一週間後には血圧も安定した状態で運動を再開することができました。

疾病予防運動施設では、運動開始前のコンディションを確認し、時には運動を中止して頂き、医療機関の受診をお勧めする場合もあります。今回のような事前の対応が、運動中・後の事故発生の防止に繋がると考え、今後の指導に努めて行きたいと思います。
※21世紀における国民健康づくり運動







