※武田病院グループが発行する「たけだ通信」記事からの転載です。医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。
脳と神経の働きと病気
武田病院 副院長 神経脳血管センター 部長 八木 秀
痴呆防止に適度なスポーツを
脳には主に二つの働きがあります。 一つは、生命を維持してゆくという自分の体に対する働きかけであり、もう一つは、外の世界に対していろいろな形で反応・応答し、人としての生き方を作るという自分の外に対する働きかけです。
それらの働きを伝えるのが、体中にはりめぐらされた神経系です。生命を維持するという生体内の働きは、脳の深部にある脳幹と間脳という部位が担当します。心臓や呼吸の調節、睡眠・覚醒の調節を行い、体を作り生命を維持するもので、それらの命令を自律神経が各臓器に伝達します。自律神経には交感神経、副交感神経があり、各臓器を活性化したり休ませたりして生命維持のバランスをとっています。もう一つの外の世界への働きかけは、脳幹、間脳の上にのっかっている大脳と言う部位が受け持ちます。大脳の働きは物を考えたり、覚えたり、判断したりするものです。
また、体性神経(末梢神経)の運動機能や感覚機能を使って、泣いたり笑ったり、手足を動かしたり、外の世界に積極的に働きかけて、情報を取り入れたりします。
脳や神経のこのような働きによって、人は生命を維持し自由で生き生きとした生活を送ることができるのです。 しかし、なんらかの病気によって脳や神経が障害されると、手足が動きにくい、痛む、めまいがする、しゃべりにくいなど、実にさまざまの体の症状がでてきます。
これは、脳や神経がいくつかの部位に分かれ、それぞれの部位が独自の役割を持ち(脳機能の局在性といいます)、ほかの部位では代わりの働きをすることができないことによるものです。
例えば、脳幹が障害されると生命が危なくなりますし、大脳の運動領域が障害されると麻痺が、言葉の領域が障害されると失語が起こるといった具合です。
したがって、神経学的異常を見れば、脳や神経のどの部位がどの程度障害されているのか推察できるというわけです。
このような脳や神経に異常を起こす病気は数多くありますが、だれもが心配する脳の病気に、脳卒中とボケ(痴呆)があります。脳卒中をおこす要因として、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙などがあげられます。このうちの二つでも当てはまれば、加齢とともに間違いなく脳卒中をおこします。
ボケには大きく分け、脳梗塞、脳出血によっておこる脳血管性痴呆と、脳の神経細胞が原因不明で消滅していくアルツハイマー型痴呆があります。
10年前は脳血管性痴呆が7,8割でアルツハイマー型痴呆が2,3割と言われていましたが、今は5分5分でアルツハイマー型痴呆が増加傾向にあります。寿命が延びたことと、アルツハイマー型痴呆の診断がしっかりできるようになったという二つの理由からです。
ある統計で、小学生~中学生の時や、四十歳以降に多く運動しているとアルツハイマー型痴呆になりにくく、20歳代以降の多くの運動は脳血管性痴呆になりにくいという結果が出ています。運動も、ジョギングやウエートトレーニングなど体にかなりの負荷をかけて、脳を含め体全体の血流をよく回転させないと効果がありません。
また見る、聞く、話すというあらゆる能力を使うことが大切です。食生活は、魚と野菜を主体とした食事の方がアルツハイマー型痴呆になる率が低いようです。脳血管性痴呆は男性に多く、アルツハイマー型痴呆は女性に多い傾向がありますが、老いてこそますますスポーツをすることが痴呆にならないためにも非常に大事になると思います。
最近では、MRIや脳血流検査などの新しい検査法によって、脳血管や脳、神経の異常を早期に的確につかまえ、必要な治療をできるだけ早く行えるようになってきています。
また、機能的MRIの導入により病変部位がわかるだけではなく、その病変部位の代わりに脳のどの部位が活動しているのかを目でみることができるようになり、いままで以上に有用なリハビリを行えるようになってきています。
脳に重大な障害が起こる前に、特に頭が痛いなどの症状がなくても、30歳代ぐらいまでに一度脳ドックをうけ、脳動脈瘤や脳出血などの脳血管異常や神経学的異常がないかチェックされるといいでしょう。







