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消化器のお話~ヘリコバクター・ピロリ菌について~
医仁会武田総合病院 消化器センター医長 柏 敦文
ヘリコバクター・ピロリ菌とは
胃は強い酸性のため普通の細菌はなかなか住めませんが、ヘリコバクター・ピロリ菌は胃に感染します。大きさは約4マイクロメートル(1000分の4ミリ)で、2、3回ねじれたような形をしたらせん状の形をしていて、4~8本ぐらいのべん毛を回転させて活発に動きまわり、酸の弱そうなところを感じ取りながら移動します。ピロリ菌は、胃の強い酸から身を守るために「ウレアーゼ」という酵素を分泌してアンモニアを大量に作ります。そうすることによって胃酸を中和し、酸性の胃の中に住むことができるのです。また、ピロリ菌に感染するとほぼ100%炎症を起こします。
ピロリ菌の感染方法
ピロリ菌は主に経口感染しますが、実際のところ感染警護ははっきりしていません。しかし、感染は免疫能力が不十分な幼少期に起こっていて、成人は感染する機会がほとんどないだろうといわれています。例えば、ピロリ菌に感染している両親が口移しで離乳食を食べさせたりしてしまうと、感染する可能性があります。また、汚染された水や食品を介して感染したり、ペットや害虫などの媒体動物からの感染の可能性も指摘されています。成人になってから感染しても急性胃粘膜病変を起こすことはありますが、一過性の感染で終わることが多いといわれています。
ピロリ菌とほかの病気の関係
現在指摘されている病気は、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がん、MALTリンパ腫、びまん性大細胞B細胞性リンパ腫、特発性血小板現状製紫斑、貧血、じんましんなどがあります。実際に疾患が現れるのは3割程度で、残りの7割は持続感染しながらも症状が現れないような健康保菌者だといわれています。
ピロリ菌と胃潰瘍・十二指腸潰瘍
ピロリ菌に感染すると必ず潰瘍になるわけではありませんが、ピロリ菌感染者のうち約2~3%の人が潰瘍になります。しかし、胃潰瘍や十二指腸潰瘍患者のうち約90%がピロリ菌感染者だということがわかっています。さらに、ピロリ菌に感染している場合、胃潰瘍は65%、十二指腸潰瘍だと85%の人が再発するといわれています。このことからピロリ菌と胃潰瘍、十二指腸潰瘍の関連がすごく強いことがわかると思います。ピロリ菌を除菌した場合、いずれも10%、7%弱ぐらいまで再発率を下げることができます。
ピロリ菌と胃がんの関係
近年ピロリ菌と胃がんとの因果関係が明らかになってきていて、ピロリ菌感染者は非感染者に比べて約5倍近く、胃がんになりやすいことがわかりました。また、過去に感染歴のある人の胃がんリスクは10倍以上といわれています。ピロリ菌に感染していても全員が胃がんを発症するわけではありません。発症するのはごく一部ですが、なんらかの因果関係があることは濃厚になったといえるでしょう。
ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌の検査には内視鏡を使うものと使わない検査があります。
内視鏡を使う場合
- 培養法→胃の粘膜を採取してそれをピロリ菌の発育環境下で5~7日培養して判定する。
- 迅速ウレアーゼ法→ピロリ菌が持っているウレアーゼという利用して調べる方法で、採取した粘膜を特殊な反応液につけて、その反応液の変化で判定する。
- 組織鏡検法→胃の粘膜の組織標本に特殊な染色をしてピロリ菌を顕微鏡で探す診断法。
内視鏡を使わない場合
- 尿素呼気試験法→診断薬を服用し、服用前後の呼気を集めて診断する最も制度の高い診断法。感染診断前と除菌判定検査によく使われる。
- 抗体測定法→血中や尿中のピロリ菌に対する抗体を測定する。
- 抗原測定法→便中のピロリ菌に対する抗原を測定する。
ピロリ菌の除菌
治療ピロリ菌の除菌には、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)と2種類の抗生物質を朝夕1日2回、1週間服用します。1回目で成功するのは80~90%といわれていて、必ずしも100%成功するとは限りません。1回目で除菌が成功しなかった場合は、再除菌を行う必要があります。除菌治療中に下痢、軟便、味覚異常やまれに肝臓機能の数値が上がることがあります。これらは主な除菌治療の副作用ですが、これ以外にも症状が出ることがありますので、症状がひどくなった場合は専門医に相談してください。除菌に成功すると潰瘍ができることはほとんどありません。ただし、痛み止めの服用が原因で潰瘍ができとはあります。治療が終わったあと、4週間後に除菌治療が本当に成功したかどうか検査する必要があります。また、ピロリ菌の再感染率は2~3%と低いといわれていますが、除菌成功後も潰瘍の再発や胃がんなどが発見されるケースも報告されているため、1~2年に1回は経過観察のために検査を受けることをお勧めします。除菌治療後は、5~10%ぐらいの人に逆流性食道炎や胃・十二指腸にただれが発生することがあります。これらはいずれも軽症であることがほとんどで、治療が必要になることはまれです。除菌によって胃酸の分泌が改善されたことによるのではと考えられています。また、胃の調子がよくなることで肥満になってしまうこともありますので、体調管理に気をつけて規則正しい生活習慣を送るように心がけましょう。







