※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

がんの化学療法
武田総合病院 副院長 大野仁嗣
がんの化学療法とは
- 化学療法の目標は、がんの進行を遅らせることで症状を和らげ、元気に生活できる時間をひきのばすことです。
- 副作用をコントロールすれば、日常生活にあまり支障をきたさず治療を継続することができます。
- 苦痛を和らげる治療(緩和医療)は、化学療法と同じく、がんの治療の大きな柱となります。
- 治療にかかわるチーム全体で、最善の方法を一緒に考えながら患者さんをサポートします。
化学療法で使用するお薬
これは、大きく分けて2種類あります。
一つはがんの治療薬、もう一つは症状や治療薬の副作用を緩和する薬です。がんの治療薬については、いわゆる抗がん剤、分子標的治療薬、あるいは前立腺がんや乳がんといったホルモンの感受性が高いものにつきましてはホルモン剤も投与します。症状を緩和する薬につきましては、鎮痛剤(痛み止め)制吐剤(吐き気止め)、顆粒球(白血球)増加因子、抗生物質、輸血などがあります。また、よく下痢をしたり便秘になることもありますので、消化器の緩下薬、下剤といった薬を投じることもあります。
大腸がんの化学療法
大腸がんは、化学療法の進歩が最も著しいがんの一つです。
大腸といいますと、口から始まって食道、十二指腸、小腸につながる消化管の一番最後の臓器です。大腸は、盲腸、虫垂、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸につながって直腸、肛門管へとつながります。大腸がんは、大腸のどこにでも発症します。最初は粘膜にとどまっているだけなんですけれども、だんだん進行いたしますと深部のほうへ向かっていきます。ときにはリンパ腺や肺に転移することもあります。このような進行の具合は、リンパ節や肝臓、肺などの転移状況によって、ステージ分類(ステージ0~4の5段階)されています。大腸がん化学療法は、多臓器や肺に転移していて、再発してしまって外科手術では治療できないものを治療します。
再発・転移大腸がんの化学療法
がんは体にとって非常に有害なものですが、通常の血管からの栄養だけでは足りないため、新しい血管を誘導して(血管新生)、栄養を補給しようとします。近年新しく登場したアバスチンは、血管新生を抑制する物質を阻害することによって血管新生を阻害し、がん組織が栄養を取り入れる経路を断ってがんの成長を妨げるのです。この薬は単独では効きません。抗がん剤と組み合わせて使います。
2008年7月に出たアービタックスは、新しくできた抗がん剤です。この薬は、がん細胞が増えるために必要なシグナルを受け取る上皮成長因子受容体(EGFR)というタンパク質と結合することで、シグナルの伝達を遮断し、がん細胞の増殖を阻止するのです。
これら薬の投与は、皮下埋め込み型ポートを使って投与します。ポートとは、血管内に刺した細い管(カテーテル)を皮下に埋め込んで、必要なときに体外から接続して薬の投与ができるようにする器具です。そとから見ると、表面が少し盛り上がって見えるだけで、目立つことはありません。患者さんは、このポートを埋め込んだまま仕事をしたり、スポーツをしたりすることができるので、現在幅広く用いられています。
慢性骨髄性白血病
慢性骨髄性白血病の特徴は、白血球が著しく増加します。そして、左のわき腹付近にある脾臓がとても大きくなります。巨脾と呼ばれることもあります。当初は慢性的な経過を示しますが、3ないし7年で移行期を経まして、急性転化し死に至ります。これはドイツの病理学者・ウィルヒョウ先生が「Welsses Blut(=白い血液)」と呼んだことから、白血病という単語が生まれました。
慢性骨髄性白血病の治療は、1996年にドラッカー博士が開発したグリベック登場以前は、インターフェロンや、同種骨髄移植などで治療が行われてきました。慢性骨髄性白血病は、フィラデルフィア染色体と呼ばれる遺伝子の突然変異が認められます。このフィラデルフィア染色体が作り出す異常なタンパクに作用して働きを妨げることで白血病細胞を減少させるのがグリベックです。このグリベックが登場してから、慢性骨髄性白血病の治療はすっかり変わりました。
緩和医療(緩和ケア)
緩和医療(緩和ケア)とは、生命を脅かす疾患に直面している患者とその家族に対し、早期から、痛みやその他の身体的、精神的、社会的、そしてスピリチュアルな苦痛を、予防、診断、治療、ケアすることによりQOLを向上させるアプローチであると、WHOが定義しています。がん対策基本法というのがあるのですが、この第16条に早期から適切に行われるようにすることと定められています。今までのがん医療の考え方は、がん治療と緩和医療の間には境界があり、一方通行である(すなわちがん治療を終了させて次の段階に移るという意味)と考えられていましたが、実はそうではなく、緩和医療というのは早期から行っており、徐々に移行していくことができ、一方通行であると考えられていましたが、そうではありません。お互いに行き来することができます。
このような考え方を「Seamless transition=継ぎ目のない移行」と言います。
医療費の助成
抗がん剤治療にかかる医療費は、非常に高いです。
例えば、大腸がんの一回にかかる治療費は、お薬だけでもおよそ40万円ぐらいかかってしまいます。これを2週間、長い方ですと1か月、半年、1年とかかります。お薬だけで40万円ということは、診察代や治療費なんかを含めると、非常に高額になってきます。もちろん、医療費の助成措置がされています。高額療養費助成といって、患者さんの収入によって異なりますが、同じ月の間に々医療施設の同一診療科で保険適用の自己負担額が一定の金額を越えた場合、超えた額の払い戻しが受けられる制度です。
外来と入院とを別にして計算、申請により支給されます。







