※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

神経外科医からのメッセージ
武田総合病院 脳神経外科部長 川西昌浩
加齢の物忘れは日記をつける
神経は頭から末梢まで巡っており、そのすべてを網羅するのが神経外科です。しかし、日本では脳神経に特化しています。外来には「物忘れ」を訴える方が多いのが現状です。食事をしたか、日常的な道に迷う、ありふれた名前が思い出せないなどの「危ない物忘れ」は注意が必要です。一方、加齢による物忘れは防ぐ手立てがあり、日記を書くことで過去を思い出す作業などが有効です。 「睡眠薬の飲み過ぎ」や、お酒で呆(ぼ)けるのではという質問をよく受けますが、そのようなデータはありません。血液型、被爆、輸血なども痴呆の原因にはなりません。むしろ、
- 趣味がない
- 手紙を書かない
- 電話もしない
- 外出しない
- 友達がいない
- 新聞や本を読まない―等
が誘因となります。
治療で劇的に回復する認知症
本来、認知症は進行あるのみですが、劇的に回復するものもあります。一つは「正常圧水頭症」です。脳脊髄液が過剰になって脳を圧迫し、歩行困難や精神活動の低下を招きます。認知症の5%を占めていますが、手術で容易に完治します。もう一つはけがの2~3週間後に脳内で出血する「慢性硬膜下血腫」で、特に飲酒する方は要注意です。飲酒で脳に隙間が生じることで、打った、当たったなどの少しの衝撃で血管が切れやすくなるからと言われています。これも手術で回復できます。
脳梗塞は3時間以内で良い結果
脳梗塞は血管が詰まって、脳内の神経に支障をきたす病気で、多くは片方の手と足、または手と顔のセットで障害が現れます。物が握れない、落としたり、細かい動作ができないといった症状が出ます。呂律(ろれつ)が回らない、言いたいことが言えない、あるいは理解できないなども脳の症状です。これらは、ほとんどが大きな発作の前触れなので、3時間以内に診察を受ければ良い結果が得られます。 脳梗塞には
- ラクナー梗塞
- アテローム血栓性梗塞
- 心臓からの血栓による梗塞のパターンがあり
1.は最も多いパターンで、脳の太い血管から出た最終の血管がつまり、運動を司る急所に引っかかった状態を言います。これは手術ができないので、専ら禁煙や血圧管理などの予防が大切です。再発予防の薬として「シロスタゾール」があります。
3.は高齢者に多く、心房細動(不整脈)が原因で血栓が生じるのですが、治験によると心房細動の治療以上に血栓予防の治療がより有効であることがわかりました。不整脈とわかれば循環器科を受診して、疑いがあれば予防薬「ワーファリン」の内服をお勧めします。服用中は過度のビタミンKの摂取を禁じられますが、納豆を除いて、キャベツ、ブロッコリーなどで摂り過ぎになることは考えられないので、さほど気にすることはないでしょう。
2.は油の固まり(アテローム)が血管内に付着し、梗塞を起こします。首の血管の70%以上が狭くなっている場合、脳梗塞になりやすいとされています。
脳梗塞には予防が第一
現在、脳梗塞の治療薬は血液を固まりにくくするためのもので、血管を広げる効果はありません。従って、首の血管の手術かステントの挿入で血管を広げる方法しかありません。完全に詰まった場合は、バイパス手術となります。いずれにしても予防がもっとも大事で、脳梗塞の危険因子である高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、肥満、運動不足(死の六重奏)を避けなければなりません。ただし、血圧は外的因子で変化するので、起床と就寝前に測定することで正確な数値を把握することが可能となります。
また、麺類やご飯を含む糖分の摂り過ぎは要注意です。効果的なダイエット法として、毎食前に大量の野菜を摂ることをお勧めします。運動は目標を持って毎日つづけること。激しい運動は禁物です。脳内出血は、その場所の神経を破壊してしまうので、これを回復させることはできません。ですから禁煙と血圧管理など動脈硬化予防しか方法はありません。
女性に多い手根管症候群
女性の外来に多く見受けられる手のしびれ(親指から薬指の半分)は「手根管症候群」と言い、親指と小指の間の靭帯が厚くなり、神経を圧迫する病気です。
手を握るなどを控えることで軽くなりますが、どうしても困難な場合は日帰りの手術で回復します。
また、小指あるいは薬指の外側だけがしびれる場合、ひじの内側の神経の使い痛みによるものです(肘管症候群)。橈骨神経の圧迫による下垂手(麻痺状態)なども多く見受けられます。飲酒はビール1本までにとどめる分には問題ありませんが、高カロリーなので食事は控え、うたた寝を避けねばなりません。
また、急激に大量の放尿をすることで失神を起こすことがあります。
頚椎症は骨のとげが脊髄を圧迫
70%の人が頚椎症ですが、症状がひどい場合は手術を必要とします。
骨のとげが脊髄の神経を圧迫すると手足が動きにくくなり、痺れが出て日常生活に支障が生じるため、手術がやむを得ないことになります。
予防として
- 洗髪は前向き
- 高いところを見上げない
- 枕を高くしない
- 重いものを持たない
- 振動を避ける
- 禁煙―等
が大切です。
腰椎圧迫骨折にはセメント療法
腰椎症は、腰の病気で最も多いものです。立ったり座ったり、起立歩行すると足に痛みが伴い、腰をかがめると緩むといった症状です。
腰が悪い場合(脊柱管狭窄症)と、足の血管に異常がある場合が考えられます。
腰の場合は前かがみになると回復します。
足の血管の場合は直立でも痛みが回復します。前者は背中の靭帯が厚くなり、神経を圧迫するためです。放置することで悪化する方は1/3程度なので、日常の生活では手押し車や杖を使用することで快方、もしくは温存することができます。
圧迫骨折は歩行困難、寝返りも困難ですが、最近はセメント治療によって90%の方が快方に向かうことができます。







