※医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

薬のリスク
医仁会武田総合病院 薬局長 小川陽子
ノロウィルス
昨年末から、ノロウィルスがまた大流行しています。かつては加熱不十分な二枚貝による食中毒が中心でしたが、近年は「人から人へ」も感染しています。突然の強い吐き気が特徴で、下痢や発熱を伴うことが多いようです。
ノロウィルスに対しては、治療薬はありません。消毒にはハイター(次亜塩素酸ナトリウム)が有効で、自衛の基本はこまめな手洗いです。
くすりを逆に読むとリスク
すべてのお薬には、治療効果と共に副作用が存在します。リスクのないお薬はないといってもいいかもしれません。
サリドマイド薬害事件
皆さんはサリドマイド薬害事件を覚えておられますか?
サリドマイドは1957年にドイツで開発された鎮静剤です。その後日本でも1958年~1962年、多くの妊産婦が睡眠薬として服用したところ、四肢短縮症という多くの奇形児(あざらし症)を出産した薬害事件が引き起こされました。日本でも309例の被害が報告されています。
そんな怖いお薬だったサリドマイドが今復活しようとしている、といったら皆さんは驚かれるでしょう。サリドマイドは、ハンセン氏病に伴う皮膚炎の治療やベーチェット病や関節リウマチやクローン病や多発性骨髄腫などの治療に効果があるそうです。
サリドマイドには血管が新しく作られるのを防ぐ作用があります。胎児に腕や脚ができる段階で血管が作られないと、その部分に十分栄養が行き渡らず、手足が成長できなくなります。これがあざらし症の原因でした。
がん細胞は急速に細胞分裂するため、盛んに血管を作ってたくさんの栄養分を引いてこようとします。ここをサイリドマイドで叩いてやれば、栄養補給ができなくなり、がん細胞は増殖できなくなるといいます。
そもそも薬の作用とは必ず表裏一体のもので、表面に現れる作用のうち、人間に都合のよいものを「薬理作用」、都合の悪いものを「副作用」と呼んでいるに過ぎないのです。
薬害C型肝炎
このところ新聞やTVニュースで毎日耳にする薬害肝炎問題ですが、今年1月11日「肝炎被害救済給付金支給法案」が参院本会議で採択され、全会一致で可決、成立しました。
C型肝炎は、C型肝炎ウィルス(HCV)に感染している人の血液が他の人の血液内に入ることで感染します。1988年(昭和63年)にようやくC型肝炎ウィルス本体が明らかになりました。
感染経路として一番多いのが輸血(全体の40%)で、献血による血液(いわゆる輸血)に対してC型肝炎ウィルスの検査が行われるようになったのは1988年(昭和63年)になってからのことでした。
しかし、世の中でC型肝炎の検査がまともにできるようになったのは、1992年(平成4年)あたりからですので、厚生労働省は平成4年以前に大量出血して輸血した覚えのある人は肝炎の検査をするように呼びかけているのです。
C型肝炎の感染原因としては、
- C型肝炎ウィルスが含まれている血液を輸血した場合。
- C型肝炎ウィルスに感染している人と注射針や注射器を共用したり、誤って針を刺してしまった場合。(昔の予防注射、医療従事者の針刺し事故など)
- C型肝炎陽性の血液を傷のある手で触ってしまった場合。
- C型肝炎ウィルスに感染している人に使用した器具を適切な消毒なく共用して、刺青やピアスの穴をあけ、出血を伴う民間療法を行った場合。
- C型肝炎ウィルスが含まれている血液が付着したカミソリや歯ブラシを共用した場合。
- 長期間にわたって血液透析を受けている場合。
など、いろいろあげられます。 今回の救済法案では、血液製剤「フィブリノゲン」や第9因子製剤「クリスマシン」などで肝炎になった被害者に対し、投与期間に関係なく症状に応じた補償金を支払うとされています。かつての予防注射の注射器の使い回しや輸血による感染は今回の救済対象にはならないとされています。
今年も麻疹(はしか)が流行
昨年もまた大学生や高校生を中心にはしかが流行しました。今年も流行するでしょう。これは、この世代の麻疹ワクチン接種率が低かったことが一因といわれています。
1989年~1993年(平成1年~5年)に予防接種に使用したMMRワクチン(麻疹・風疹・おたふくの3種混合ワクチン)で無菌性髄膜炎の副作用報告があったため、定期接種にもかかわらず予防接種に連れて行かなかった親が多かったからです。
そこで、厚生労働省は、2008年度より中学1年生と高校3年生の世代に、麻疹ワクチン(MRワクチンを含む)を定期接種として5年間導入することを決めました。最近は、学校での集団接種はしない傾向にありますので、この世代の子供達がきちんと接種を受けてくれるのか、心配なところです。
最後に
薬には必ず副作用があります。いつもと違う気になる症状がありましたら、早めに受診いただきますようお願い致します。







