※武田病院グループが発行する「たけだ通信」記事からの転載です。医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

からだにやさしい癌治療―内視鏡的粘膜下層剥離術
医仁会武田総合病院 消化器センター 滝本 見吾
癌の切除法には、外科的手術で切除する方法と内視鏡で切除する方法があります。内視鏡治療は低侵襲で、臓器の機能が温存でき、術後に食欲低下、やせがない等の大きな利点がありますが、リンパ節の郭清ができないため、リンパ節転移のない早期癌が治療の対象となります。内視鏡治療には、従来から行なわれていた内視鏡的粘膜切除術(EMR)と最近開発された内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とがあります。EMRは粘膜に発生した癌の下(粘膜下層)に水を注入し浮き上がった癌のまわりに金属の輪(スネア)をかけて切除します(図1)が、大きな病変は一度に切除できないことや周辺に癌が残り再発しやすいという限界がありました。
これらの欠点を克服するために開発されたのがESDです。ESDでは電気メスで、まず癌の周辺を充分切開してから、粘膜下層を筋層との間で剥ぎ取っていきますので、これまでの方法では一括切除できなかった大きな病巣を取り残しなく切除することが可能となりました(図2)。
胃癌(図3)、食道癌(図4)、大腸癌(図5)の治療中の写真を示します。外科手術と同様に癌が一塊で取り出せますので、根治治療となる可能性が高くなり、癌の深さや血管・リンパ管への浸潤を術後の病理診断で正確に行えるというメリットもあります。当院では平成17年より早期悪性腫瘍に対してESDを導入して、現在まで食道、胃、大腸の病変に対して160例施行して参りました。合併症としては出血、穿孔が約3%あります。治療時間は病変の大きさ、部位によって異なりますが、概ね30分~2時間程度です。普通の内視鏡検査より長時間を要しますので、充分な沈静下でおこないます。通常、翌日より摂食可能となり、1週間程度の入院で治療が完了します。 あくまで内視鏡治療は病変が粘膜層にとどまっている早期癌が対象です。リンパ節は切除できません。癌が進行すると、腹腔鏡による手術か、開腹手術になります。何よりも早期発見が大切です。たとえ癌になっても内視鏡治療で済むように、ぜひとも定期的な検診を心がけて欲しいものです。


(図3)早期胃癌

(図4)早期食道癌

(図5)早期大腸癌







