※武田病院グループが発行する「たけだ通信」記事からの転載です。医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

CT検診による肺癌の早期発見と外科治療
康生会武田病院 呼吸器センター 外科部長 三宅 正幸
欧米だけでなく、日本でも、肺癌は癌死亡原因の一位を占めており、現在、年間6万人強もの人が死亡しています。また、化学療法や放射線療法などにも難治性でいまだに悪性度の高い癌種の一つです。しかしながら最近、大都市での早期肺癌の5年生存率は、90%前後にまで向上してきました。この理由の一つとして考えられるのが、末梢型早期肺腺癌の増加と低線量ヘリカルCTによる早期発見です。
従来の肺癌集団検診
従来の胸部X線写真と喀痰細胞診検査は、アメリカでは肺癌の集団検診としては、2004年のUSPSTFの勧告で、6つのコホート研究から肺癌による死亡率を改善できる明らかな証拠がなく、集団検診としては勧められないとされました。これにより、従来のグレードD(無効ないし、害が利益を上回る)からグレードI(データが不十分で、現時点では勧めることも否定することもできない)に修正されました。さらに、日本の肺癌学会ガイドラインでも、推奨グレードがCに変更されており、その有効性は疑われています。
一方、1990年代後半から、大都市での肺癌検診は、低線量ヘリカルCTによるものが主流になってきており、縦隔や横隔膜との重なりで、胸部X線写真では見落とされていたものも、早期に発見されるようになってきました。
実際の画像診断

症例1(Chest X-P)

症例2(Chest X-P)
症例1に示しているのは、上肺野の扁平上皮癌の一例ですが、胸部X線写真では肋骨の陰影に隠れて図にお示ししますように発見できません。一方、ヘリカルCTでは、このようにはっきりとした陰影として描出されております。 次にお示しします症例2の病変は、上肺野のBAC(bronchiolo-alveolar carcinoma)と、前癌病変であるAAH(atypical adenomatous hyperplasia)の左上葉における同時発生を示しておりますが、やはり、胸部X線写真では、全く認めることができません。一方、ヘリカルCTでは、青の矢印で示されるBACの部分と、黄色の矢印で示されるAAHの部分が見事に描出されております。

症例1(Chest CT)

症例2(Chest CT)
今後の展望
武田病院でも、低線量ヘリカルCTを肺癌スクリーニングに導入していこうとする理由としては、次のようなことが挙げられます。
まず、肺野型肺癌が増加してきていること、肺野の結節発見能が胸部X線写真に比べてCTの方が優れていること、これらにより胸部写真での見落としや見逃しを防げることが第一に挙げられます。
次に、現在の検診時ヘリカルCTによる被爆線量は、50ミリアンペア近くまで軽減されてきており、被爆量を心配する必要がないこと、また、最新の64列ヘリカルCTによる撮影時間は、7秒前後にまで既に短縮されており、非常に短時間で済む事などが挙げられます。
最後に、これらのデジタル情報は、僻地でも自動診断支援システムの開発により、優れた放射線科医師により読影可能となっていることなどが挙げられます。
我々はこのような理由から、低線量ヘリカルCTの導入により、早期肺癌の発見に努め、肺癌の予後の改善に努めていきたいと考えております。







