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健康のために

くすりのお話し

※武田病院グループが発行する「たけだ通信」記事からの転載です。医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

医仁会武田総合病院 直腸肛門科 部長 枡本 博文

新しい内痔核治療法-ジオン注-

医仁会武田総合病院 直腸肛門科 部長 枡本 博文

内痔核の治療には表に示すような方法があります。内痔核の程度によって保存的治療または手術的治療が選択されています。中間的な治療である硬化療法は、欧米では19世紀半ばより行われていましたが、重篤な合併症もみられ、効果も十分満足するものではありませんでした。しかし、新しい硬化療法剤であるジオン (OC-108)が、三菱ウェルファーマ社より2005年3月23日に発売されました。
ジオンのルーツは消痔霊であります。それは中国北京の広安門院の史兆岐らにより考案され、1979年に中国政府より認可された水溶性の硬化療法剤です。ジオンは消痔霊に含まれる溶媒に日本では認可されていないものが含まれていたため沖縄のベンチャー企業であるレオキシファーマ社が15年の歳月をかけて開発したものです。 当院では2005年6月24日より使用開始しました。治療後の疼痛もほとんど無く、治療効果も非常に優れていました。
2000年8月から2002年11月にかけて治験(第III相臨床試験)に参加した全国10医療機関で脱出を伴う内痔核患者を対象に手術療法の結紮切除術と比較検討されました。28日後の脱出の消失率はOC-108投与群では94%、80例中75例であり、手術の99%、85例中84例と同程度でした。また1年後の再発率はOC-108投与群73例中12例16%、手術82例中2例2%でした。
内痔核治療法研究会代表世話人である岩垂純一先生は、ジオン注は結紮切除術に比べて再発率では劣っていますが患者さんに与える負担が少ないことを考慮すると十分優れた治療法であると認められています。

内痔核の治療法
保存的療法
― 生活指導、薬物
中間的療法
― 硬化療法(PAO(パオスクレー)、消痔霊(ジオン))
― ゴム輪結紮
― 分離結紮
手術的治療
― 焼灼(レーザー(色素)、ハーモニックスカルペル)
切除(鋏、メス、ハーモニックスカルペル、レーザー
(YAG、炭酸ガス)、リガシュア)
― PPH(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids)

四段階注射法

ジオンの作用機序

ジオンの有効成分は硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸です。ジオンを内痔核に直接注射することによって硫酸アルミニウムカリウムは血管の透過性を亢進し血液の流れが止まる事によって、速やかに止血されます。炎症惹起により修復反応である肉芽形成を経て、組織の線維化によって、痔核の粘膜層、粘膜下層は筋層と固定されて痔核は萎縮、消失するとされています。以上の作用により、排便時の出血や内痔核が脱出する症状を消失させます。一方、タンニン酸は硫酸アルミニウムカリウムの過度の炎症を抑制して組織障害を軽減し、収斂作用による止血効果があるといわれています。

ジオン注の手技

ジオン注の成績

この治療には筒型のZ式肛門鏡とジオン針(痔核硬化療法針)を使用します。患者さんを側臥位にし、肛門鏡で十分痔核を観察します。この十分観察することが重要で、痔核の部位、大きさを見極めます。また歯状線の位置もしっかり把握することが大切です。またポリープや皮膚下垂等の副病変はジオン注に先だって処置しておきます。
当初は肛門周囲に局所麻酔を行っていましたが、最近はほとんど麻酔を行っていません。肛門鏡が挿入できれば治療可能です。
四段階注射法つまり、痔核上極、痔核中央の深部と浅部、痔核下極に分けてそれぞれにジオン針を用いて、図に示すように各々の痔核に適切な量を、痛みの無いこと、血液が逆流しないことを確認の上、ゆっくり薬液を注入します。この際痛みがあれば、針が深く入り筋層に当たっているか、肛門上皮に近すぎるかであり、針の刺入位置を変更します。注入後は硬結や痔核壊死を防ぐために、薬液が痔核内に行きわたるように肛門内を十分マッサージします。平均約15分で治療は終了します。
2005年10月28日に開かれた大腸肛門学会のシンポジウム「痔核のスタンダード診療とは」で、ジオンは高い評価を得ました。当院で、これまで33例の内痔核(Goligher II-III度)に対してジオン注を施行しました。全例に症状の改善が確認されました。ほぼ満足例を入れて90%以上に早期の効果を認めました。合併症として、術中に除脈を伴う低血圧を2例に認めたものの、いずれも一過性で点滴速度の調節や昇圧剤投与で大事に至らずに軽快しました。その他、投与直後の肛門痛(9例)や数日間の微熱(4例)が見られましたが、いずれも軽微でした。
ジオン発売前に使われていた消痔霊で高度の肛門狭窄も報告されており、発売後2年間は内痔治療法研究会主催の講習を受けた痔核治療専門医のみが使用許可されることになっています。
当院では現在、内痔核の外科的治療に原則として日帰りないしは2日間の入院でハーモニックスカルペルを用いた結紮切除術、PPH及びジオン注を適宜使いわけています。II度からIV度の内痔核にはジオン注、全周性に肛門粘膜脱を伴う内痔核にはPPH、嵌頓した内痔核を伴う症例には結紮切除術を選択しています。長期成績はまだ検討していませんが、ジオン注はII~IV度の脱出性内痔核に対して非常に有効な治療法となり得ると考えられます。



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