※武田病院グループが発行する「たけだ通信」記事からの転載です。医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

顎関節症とは?
宇治武田病院 歯科口腔外科医長 小畑 由佳
何か食べている時、顎のあたりが「カクカク」とか、「コキコキ」とか音がすることはありませんか? また、痛みを伴うことはないですか?あるいは口が開きにくくなったことはないでしょうか?
少なからず身に覚えのある方がいらっしゃることと思います。これは現代病の一つとも言える"顎関節症"といわれるもので、案外そのままにされている方も多いようです。そこで顎関節症について、少しお話させていただきたいと思います。
本疾患は
- ・顎関節痛
- ・顎関節雑音
- ・顎運動障害
を主訴とするもので、この3つの症状を有するものを顎関節症と呼びます。とは言いましても、なぜ痛くなったり音が鳴ったりということがおこるのでしょう?
まずは、顎関節の構造からみてみましょう

顎関節は図Aに示すように頭蓋底にある深い関節窩(下顎窩)と下顎骨の下顎頭の間にできる関節であり、両者の間にコラーゲンでできた関節円板が存在しています。周囲は結合組織の膜(関節襄)で包まれており、内部にわずかな液体が存在して、関節に加わる力が頭蓋底に直接加わらないようなクッションの役割をしています。
では、この顎関節が、実際どのように機能しているのでしょうか?
開閉口運動


開口開始…下顎頭は回転しますが、関節円板、下顎頭の位置に変化はありません。(図B-1) 開口が大きくなると…下顎頭は前方移動し、関節円板は下顎頭の上方に位置したまま一緒に動きます。(図B-2)
閉口運動はこの逆となります。 以上ここまでは正常な顎関節についてでした。
顎関節症になった場合、どう異常をおこすのか。
顎関節症を簡単に分類しながら説明しておきましょう。
- 1.咀嚼筋の障害。
- 2.関節部軟組織(関節包・靭帯)の損傷。
- 3.関節円板の異常。関節円板が下顎の上方からずれてしまっているもの。

(1)復位を伴うもの・・・顎運動中に関節 円板が下顎頭の上に復位するもの。復位したり、ずれたりする時に「カクカ ク」とか「コキコキ」とかいう音がしま す。この音を"クリッキング"と言います。
(2)復位を伴わないもの・・・顎運動中に関 節円板が下顎頭の上に復位せず、ずれたままになっているもの。
4.骨や軟骨の損傷。 骨や軟骨の損傷により顎関節運動が潤滑に行われずに雑音が生じますので、「ジャリジャリ」とか「ゴリゴリ」とかいう表現で訴えられることが多いです。この音を‘グレピタス'と言います。
5.心身医学的要因によるもの。
この中で3の(1)、(2)のような関節円板の障害にはMRIで、間接円板の位置と動きを確認し、確定診断を行います。(図D)
治療法

状態に応じて下記のような治療法を併用していきます。
● カウンセリング
●薬物療法・・・消炎鎮痛薬・筋弛緩薬・抗うつ薬・終皮的消炎鎮痛塗布薬
●
歯科的療法・・・スプリント療法・咬合調整
●
理学療法・・・温菴法・冷菴法・運動療法・電気刺激療法
●外科的療法
主に用いられるのは薬物療法とスプリント療法となります。 スプリント療法とは主に夜間・口腔内に装着していただくもので、スポーツ選手がプレー中に装着するものと似ています。(図E)
スプリントには何種類かありますが、主に咀嚼筋の弛緩を促す、下顎の安定をはかる、また、顎関節腔の拡大をはかることを目的としています。

顎関節症患者に発症のきっかけを尋ねると、「あくびをした」「大きな口を開けた」「大きな声を出した」「硬いものを噛んだ」などですが、このような些細なきっかけで顎関節症がおこるのは、いくつかの誘因が複合して存在しているためと考えられます。 誘因となりうるものを図示しますが、実際はなかなかこれといった誘因を断定するのは困難です。 何か御自身で心あたりのある方は、専門医・歯科口腔外科へ受診されることをおすすめ致します。







