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メディカルアドバイス

※武田病院グループが発行する「たけだ通信」記事からの転載です。医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

医仁会 武田総合病院 脳神経外科 部長 川西 昌浩

脊椎圧迫骨折に対するセメント治療 経皮的椎体形成術

医仁会 武田総合病院 脳神経外科 部長 川西 昌浩

Q 脊椎圧迫骨折に対するセメント治療とは?

骨セメント
(図1)セメント治療のシェーマ

A… 圧迫骨折した背骨(脊椎)に針を刺して、そこから医療用のセメント(骨セメント、ポリメチルメタクリレート)を注入して、補強固定し、痛みをとる治療のことです(図1)。正式には 「経皮的椎体形成術」といいますが、患者さんにはもっぱら『セメント治療』といって説明しています。

骨粗鬆症などが原因で、背骨が圧迫骨折を起こすと、強い痛みが生じます。これまで、このような骨折の痛みに対して、鎮痛剤の投与や安静、コルセットの使用などで治療してきましたが、痛みがなかなかとれなかったり、高齢者では長期臥床による足腰の弱り、肺炎、痴呆症状が生じて問題でした。

圧迫骨折した脊椎にセメントが入れられた3DCT(赤がセメント)
(図2)圧迫骨折した
脊椎にセメントが
入れられた3DCT
(赤がセメント)

それに対してこの治療では局所麻酔のもと、切らずに針一本でできるので、負担は軽く、また所要時間は30分ほどです。骨由来の痛みに関してはほぼ確実にとれます。治療後の長期安静は不要で、数時間後には離床が可能となります。

つい先日、セメント治療を行った86歳の女性(図2)ですが、治療前は猛烈な痛みのため、声は小声で、寝返りを自分でうつ気力もなくなり、痴呆症状もでてほとんど寝たきりでしたが、セメントを入れたとたん、痛みが消え、自分で歩かれるようになりました。でていた痴呆症状も消え、同室の方と大声で談笑されている姿は全く別人で、治療した我々がびっくりするくらいの回復ぶりです。


Q 経皮的椎体形成術の適応と治療効果について

A…骨粗鬆症や転移性脊椎腫瘍による圧迫骨折の痛み(椎体由来の痛み)に対して適応があります。急性期、慢性期を問いません。ただし術前、責任部位確定のため、MRIが必須です。単純レントゲンだけでは圧迫骨折していても、責任部位かどうかはわかりません。責任病巣の同定さえ誤らなければ術翌日より起立歩行時の骨由来の痛みはほぼ確実に消失し、効果は永続します。痛みから解放され、歩けるようになり、中腰が可能となる等、日常生活能力が改善されます。

Q 経皮的椎体形成術の歴史について

A…今から20年前に、頸椎腫瘍に対して骨セメントの注入を行い、治療しだしたのが最初といわれています。骨粗鬆症による圧迫骨折に対して骨セメントの注入を行い始めたのが10年前で、以降、1990年代後半頃より米国を中心に、骨粗鬆症による圧迫骨折の治療にセメント注入が行われ、その効果が認められるようになりました。
我が国でも強い痛みを伴った圧迫骨折の治療方法として、数年前より一部の医療機関で実施されるようになってきています。

Q 入院期間、費用について

A…圧迫骨折の原因、症状、病変部の状態などによって個人差はあります。たいていの場合、入院・検査・手術・退院までで、4~5日程度です。特別に必要な費用などは特になく、一般的な入院にかかる費用程度です。

Q 具体的な治療方法について

術中写真(針をいれているところ)
(図4)術中のCT写真
(テスト造影)

術中のCT写真(テスト造影)
(図3)術中写真
(針をいれているところ)

A…治療は「CT室」で行います。CT台の上に腹ばいになってもらい、局所麻酔を行います。CTで確認しながら、背中から針を脊椎内に進めます(図3)。針が脊椎内の最適部位にあることを確認するために、造影剤を注入して撮影を行います(図4)。これで安全を確認した後、歯磨き粉くらいの柔らかい骨セメント(図5、6)を、レントゲンで確認しながら慎重に脊椎内に注入し、針を抜去して終了です。通常、治療は30分前後で終了します。骨セメントは約1時間で固まりますが、安全のために2時間程度、ベッド上で安静をとってもらっています。以降は歩行など自由にしてもらいます。患者さんの希望により、翌日には退院可能です。


Q 合併症について

実際の骨セメント
実際の骨セメント
(図5、6)
実際の骨セメント

A…可能性は低いですが、骨セメントに対するアレルギーが生じる場合があり得ます。また骨セメントが脊椎以外に漏れ出た場合、肺塞栓や脊髄損傷の可能性があります。(肺塞栓は同じ種類の骨セメントを用いる人工関節の手術では、0.02%の発生率です。今回紹介した治療では使用する骨セメントが少量であるため、発生率はこれよりも低いと考えられています。)当院では16列マルチスライスCTを駆使して、動態撮影や、造影直近のリアルタイムな画像を何度も確認しながら、あらかじめ最適のセメント注入部位を決めています(図2、図4)。これに加えて、術前診断、術中支援、セメントの管理など、放射線科、臨床工学科スタッフの協力をえて治療成績向上を図っており、合併症は生じていません。

今回紹介した経皮的椎体形成術は痛みに対して、低侵襲で十分な効果が得られる理想的な治療方法です。圧迫骨折に苦しむ患者さんの福音となれば幸いです。



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