※武田病院グループが発行する「たけだ通信」記事からの転載です。医師やスタッフの肩書き/氏名は掲載時点のものであり、現在は変わっている可能性があります。

内痔核の新しい手術法について
医仁会 武田総合病院 直腸肛門科 部長 枡本 博文
損傷少なく 鎮痛剤もほとんど不要
痔核は痔瘻、裂肛と並ぶ肛門三大疾患の一つで、便秘や下痢などの排便異常、いきみ動作の繰り返しによる痔静脈叢の鬱血、拡張と年齢や体質による静脈叢支持組織の弛緩によって発生します。
肛門皮膚にできる外痔核と直腸粘膜部にできる内痔核があります。
外痔核は疼痛の少ないものは保存的にみますが、疼痛の強いものは外来で血栓除去や外痔核切除を行っています。
内痔核の程度を示す指標としてGoligher分類が一般的で分かりやすく、次の4段階に分けられています。
- 第I度・排便怒責時だけ肛門管内に軽度膨隆する。
- 第II度・努責時に痔核が、外方に脱出するが自然に肛門管内に還納する。
- 第III度・排便時脱出だけでなく、還納を要する。
- 第IV度・脱出した痔核が、肛門管内に完全に還納できない。
第III度以上を痔核の手術適応としていますが、第II度でも保存的治療に抵抗し、著しい出血がみられたり外痔核を合併し疼痛が激しく、日常生活に不安や支障をきたしている場合は入院手術に切り替えています。当科での内痔核の手術法は二つに分けることができます。
一つは従来通りの痔核切除、もう一つは支持組織の脆弱に基づいたPPH(Procedure for Prolapse and Hemorrhoids)です。
痔核切除では痛みを感じる肛門上皮を含めて切除するため、術後の痛み(特に排便時)や分泌物を伴い職場復帰が遅れたり長期入院につながっていました。そこで、2年前より、先取り鎮痛(術前の鎮痛剤投与、局所麻酔剤の併用)や、超音波凝固切開装置を採用しました。
この結果、術後の肛門痛の大幅な緩和が得られ、術中出血がほとんど見られなくなりました。
切除面に露出した内括約筋は損傷を受けることなく、手術時間の短縮につながっています。更に創傷治癒促進及び局所感染予防目的で、肛門縁まで縫合し皮膚欠損部を一部残すようにしています。
PPHは1993年にイタリアのパレルモ大学外科のAntonio Longo博士が考案し、現在では ヨーロッパを中心に広がっている新しい痔核の手術法であります。この方法は肛門上皮に傷つけることなく、歯状線から4cm口側の直腸粘膜及び粘膜下層を環状にサーキュラーステイプラーで切除縫合をいっきに行います。
これにより、脱出した肛門粘膜が肛門管内に引き上げられ、痔核の血流遮断により内痔核の萎縮が期待されます。
本年より、この方法を導入しましたが、術後の肛門の腫れもなく、きれいな肛門を形成することができ、肛門狭窄や分泌物が見られなくなりました。鎮痛剤もほとんど不要となりました。痔核を切除する方法はどのような痔核にも適応があり、日帰り手術に応用しています。
しかし、PPHは肛門狭窄例、高度に脱出した痔核や大きな肛門ポリープを伴っている場合はやや不向きで、術後出血の予防には直腸粘膜縫合部の丁寧かつ慎重な止血をしておくことが肝要です。現在のところ翌日退院としています。








