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武田病院グループからのお知らせです
ロボット手術の導入、実用化をめざして
1953年に世界ではじめてGibbonが開心術を行って以来既に半世紀が過ぎ、心臓外科領域でも、術式や体外循環などの新しい方法や改良をし尽くした感があります。
心臓血管外科を音楽にたとえて、「これからは奏でる時代である。」と述べた大学教授がいます。
すなわち、作曲が相次いだバロック、クラシックの時代は終わり、それらの曲をいかに表現していくかという時代に入ったという例えです。
康生会武田病院
心臓血管外科部長
山中一朗


実際には、まだまだ死亡率の高い手術はあるし、緊急手術でのリスクの高さは他の領域の比ではありません。
しかしながら、心臓外科医も第4、第5世代に入り、新しい時代に突入したことは間違いありません。
そのような現在、最も関心を集めているテーマに『低侵襲』があります。
安全で同じ手術成績なら、より小さく切開し、痛みが少なく、早く回復し早期に退院できる方がよいということです。
これは心臓外科領域に限ったことではなく、医療全体の大きな流れですが、一般外科に遅れること10年、今大きく動き出そうとしています。

例えば、冠動脈バイパス術は30年前に確立した術式ですが、数年前から胸骨を正中切開せず、助間をわずかに開けて行う術式(MIDCAB)や人工心肺を用いないで行う術式(OPCAB)が盛んに行われるようになってきました。更には、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術と同じく、内視鏡下冠動脈バイパス術が真剣に論議されるようになってきました。
しかしながら、従来の内視鏡道具では、冠動脈とグラフトを吻合するといった細かい操作は極めて困難です。
手先のような細かい操作もできる方法として考え出されたのが、いわゆるロボット手術です。

ロボット手術と言えば、まるで人間の代わりにロボット外科医が手術をしてくれる様な印象がありますが、実際には内視鏡カメラをみながら、遠隔操作で手術を行うことで、内視鏡下手術支援ロボットというのが正確です。
現在、米国のIntuitive Surgical社のダビンチと米国のComputer Motion社のゼウスの2種類の手術支援ロボットがあります。1999年11月にゼウスを用いて世界初の完全内視鏡下人工心肺非使用冠動脈バイパス術をBoydらが行いました。その後、米国やドイツを中心に3000例以上の心臓手術に臨床応用がなされています。

私は今年の1月にアメリカで行われた心臓血管外科の学会場で展示してあったゼウスを長時間操作しましたが、その性能のすごさに驚きました。また、フロリダ・ クリーブランドクリニックで、前述したBoydに会い、親しく話をする機会を得て、武田病院でも臨床応用が可能であると確信しました。

手術支援ロボット『ゼウス』


日本でも既に大学と一般病院合わせて数施設でロボットは購入され、臨床応用されていますが、日常の心臓外科診療での使用には至っていません。
このような世界、日本の現状をふまえて、武田病院にロボット手術を導入することを提案したところ、手術支援ロボット『ゼウス』を購入していただくことになりました。
心臓血管外科診療で内視鏡を用いることがほとんどないため、直ぐに臨床に使用することには問題があり、この夏は、Computer Motion社の研修プログラムを受講したり、豚の動物実験を繰り返しました。


END ACABG(内視鏡下非侵襲冠動脈バイパス術)の実際
-2002年7月19日、フロリダ・クリーブランドクリニックにて-
75歳男性患者は術後2日目に元気に退院していった。
秋には、手術支援ロボット『ゼウス』の一部である音声認識装置イソップを用いたEND ACABG(内視鏡下非侵襲冠動脈バイパス術)を行う予定です。その詳細については、実施後あらためてご報告したいと思いますが、END ACABGが軌道に乗った段階でゼウスによる心臓手術へと移行していく方針です。

ゼウスは心臓血管外科専用のロボットではありません。どんな種類の内視鏡手術にも対応可能と考えています。
日常診療で内視鏡手術を行っている一般外科、呼吸器外科、泌尿器科の先生方の中には、従来の内視鏡道具で問題ないと思っていらっしゃる方もいると思いますが、今までの内視鏡手術ではできなかった領域への応用も期待できるため、武田病院グループのいろんな科の先生に使用していただき、協力しあえればと思っています。実際、日本では一般外科や泌尿器科で主に使用されています。

10年前に腹腔鏡下胆嚢摘出術が始まった当初、時間がかかり、めんどくさいこの方法に対して、多くの外科医は批判的でした。
しかし今はどうでしょうか。ロボット手術も同様です。
今のロボットはまだまだ不備な点があり、我々も試行錯誤の連続であると思われますが、どうか暖かい目でみていただき、ご支援いただければ幸いです。
ロボット手術は、今後急速に改良が加えられていきますし、それを使用する外科医にも様々なトレーニング方法が開発され、手術適応や内科との連携のあり方も変わってくるかもしれません。将来、外科医は自宅のコンピュータの画面をみながら、ゲームでもするように手術をする時代がくるかもしれません。
いろんなことに夢を馳せながら、武田病院にしかできない特色ある医療をめざして、まず、第一歩を踏み出したいと思います。

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