
医仁会武田総合病院
心臓血管外科センター長
澤田 吉英 |
狭心症に対する冠動脈バイパス術(CABG)は1990年代半ばまでは弁膜症の手術と同じように人工心肺装置を使用し心停止下に行なっていました。ところで狭心症のほとんどは動脈硬化性疾患ですから全身性疾患であり、心臓以外にも脳や身体のいたるところに病気を有しています。糖尿病の合併も高率です。診断技術の進歩に伴い手術適応患者さんも増加しましたが、これは脳梗塞や糖尿病性腎症などの併存症を有する患者さんの増加をも意味しました。心臓は手術を受けて元気になっても、手術操作の影響で脳梗塞や急性腎不全を発症し不幸な転帰をたどった方々が少なくありませんでした。
90年代半ばになり風船療法で表現されるカテーテル治療(PTCA)が新しい治療器具を得て急速に進歩・発展しました。それまではCABGでしか治療できなかった患者がPTCAにより、外科治療に比べてより少ない苦痛で救われるようになりました。
それでもCABGでのみ治療可能な病変もあり、重篤な合併症を有する患者さんに対してもより安全な手術が望まれました。そこで発展してきたのが人工心肺装置を用いずに心拍動を保ったまま冠状動脈バイパス術を行う術式(OPCAB)です。拍動下の手術といえどもある程度の範囲内に動きを抑制しなければうまく血管をつなぐことができません。まして体の前面から見えない部位の吻合など不可能と考えられたものですが、数年間にいろいろな工夫や手術を容易にする器具が開発され、心表面上でバイパスが必要な部位のほぼどこにでも血管をつなぐことができるようになりました。わずか500円玉くらいの範囲をいろいろな技術を駆使して手術野として確保し、直径1-2mmの血管を縫い付けるのです。そうやって冠動脈バイパス術を行うのです。
心臓手術と聞くと、術後も大変そうなイメージがありますが、そんなことはありません。術後10日前後で退院可能となります。心臓リハビリの専門家の協力を得て、一日も早く自分の生活を取り戻していただきたいと思います。 |