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Essay
真の医療・福祉を

武田病院グループ 会長

武田 隆男

 国の医療政策が目まぐるしく変わり、いつもそのしわ寄せを受けるのは、われわれ医療従事者であり、患者・家族であることは言を待ちません。私が副会長を務める日本病院会など「四病院団体協議会」でも、より質の高い医療提供の体制づくりに関わるいろいろな問題について検討していますが、財源不足をたてにとり経済・財政のみで考えた医療改革が推し進められることも間違いないところでしょう。
 一般病床と区別して「療養型病床群」という制度がスタートしたのが平成4年です。9年後の平成13年の医療法改正では、さらに「一般病床」と「療養病床」という2つの定義が加わり、先の「療養型病床群」が「療養病床」と呼称変更されました。そして、医療保険では「医療療養型病床」と呼び、介護保険では「介護療養型医療施設」と呼ばれています。何とややこしいことではありませんか。医療・福祉従事者ですら理解しがたい制度をつくり、今度は、この「介護療養型医療施設」約13万床を、平成23年度末には廃止するということですから、病院ばかりでなく、介護支援センターや施設関係者も、おおわらわで対応を検討しているのが現状です。医療界を大きくゆすり、病院を淘汰するのが目的なのでしょうか。何はともあれ医療界は冬の時代から淘汰の時代に突入したといっても過言ではありません。

 昨年の一文字漢字は、医療にも関係の深い「命」でした。命を守る医療が財源に抑制されることはいかがなものでしょうか。医療は本当に国の経済の足を引っ張っているのでしょうか。福祉は邪魔者なのでしょうか。英国の医療政策の失敗、米国の民間医療保険の荒廃を反面教師として決して道を誤らないようにしていただきたいものです。
 漢字といえば、一昨年の8月に105歳でお亡くなりになった大徳寺如意庵の立花大亀老師が、生前、よく用いられた漢字に「仁者寿」があります。お茶席でのお姿は、お茶を喫するでもなく、碗を膝に抱えたまま泰然としておられ、その姿に多くの方がただただ感じ入っておられたそうです。
 「仁者」とは、「子曰(のたま)わく、仁者は静かなり、仁者は寿(いのちなが)し」という孔子の言葉です。弟子の子貢との問答で孔子はこう語りかけます。「それ仁者は己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達す」と。凡人には理解の範疇外ですが、自分がこうなりたい、こうありたいと思うことを、まず他人にしてあげなさい、という意味だそうです。
 孔子が理想としていた人物像は、「仁の心で、広く人々を救うことのできる人」だそうです。医療者たるもの、医療を施しているのではなく、施させていただいている「仁術」の姿勢でありたいものです。

 この「仁の心」をより養うためにいろいろな趣味が一役買うかも分かりません。職員の方々と話をしていますと、趣味の豊かさに安堵することがあります。山登りの好きな人。サイクリングやツーリングの好きな人。音楽の好きな人。絵の好きな人。釣りの好きな人。ゴルフの好きな人。カラオケの好きな人。なかには、パチンコの好きな人。旅行の好きな人。お花の好きな人。俳句や茶道をたしなむ人。皆さん幸福だと思います。余暇の一刻をその趣味に何もかも忘れて没頭できるからです。ストレス解消にもなりますし、より多くの人々と接することも出来ます。そして、より豊かな、広い心を知らず知らずの内に養っているわけです。無趣味と思われる方は、是非趣味を持って下さい。
 今年は第5次医療計画が行われます。医療の分野でメインとなることは、予防医学、検診と癌医療、そしてメタボリック・シンドロームをはじめとする生活習慣病です。武田病院グループではすでにこれらに対応し、更なる効果を生み出すための努力を行っています。
 医療界冬の時代、氷河の時代、淘汰の時代、厳しいときほど大きく飛躍するチャンスでもあります。厳しさを糧に、時代に沿った真の医療を貫くことが肝要と思います。
 一人でも多くの方に、思いやりの心で接することができるよう、理事長のもと、一丸となって地域医療・福祉のために励んでいただくことを期待します。


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