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麻生文雄(あそう・ぶんのう)門跡法話

醍醐寺座主 三宝院門跡
麻生 大僧正

 人というものは本来、生かされているもので、だからこそ精一杯、生きていかねばなりません。生きるということは、強い意思でもあり、人間、誰しも意思を強く持ちながら人生を全うしたいものです。幾つになろうが、人として、できるだけ多くの事々を考え、工夫を重ねながら日々を過ごすことが大切です。
 武田病院には、これまでに3度ほど入院し、先生方や看護師さんに大変お世話になりました。まるで、家族のように接していただきました。病院も、お寺と同じで、人を生(活)かすところです。病人も生きるために頑張って治療を受けています。人間みな、生きることが目標です。それが森羅万象、地球上の人々、動植物の目標でもあります。

 原爆記念日に広島で1人のご婦人と出会いました。原爆が投下された日、ご婦人の母親も被爆し、しかも身ごもっておられたのです。熱傷で倒れる寸前、「おなかの赤ん坊は助けて下さい」と叫んだところ、たまたま、産婆の経験があるおばあさんが、同じように被爆しているのに、立ち上がってお産をしてくれ、赤ちゃんを抱いたまま、お母さんも産婆さんも亡くなってしまったのです。その赤ちゃんが当のご婦人だったというのです。
 命を大切にすることを教えること、人が幸せになることを思い、求めることが、人間としての務めだと思います。
 人の命が軽々しくなっている世の中です。新聞のニュースなどで、他人ばかりか、わが子でも、小さな命に手をかけて殺す事件が、連日のように伝えられます。情けない世の中になっています。みなさん方が、もう一度、生きるとはどういうことなのかを、真剣に考え直さなければいけません。

 子供やお年寄りを守り、敬い、命を大切にすることを、まず考える。考えたことを、実践する。それこそ初めて、社会のために役に立つといえるのです。
 人一人で、大事を実行することは困難かもしれません。できる範囲で、身の周りの事々を確実にやっていく。小さく見えても、重なればものすごい力になります。1日に1つ実践すれば、1年間で365になります。
一つの言葉を口にすること、筆を取って伝えるのも大切ですが、その人の前に立って、声としてお耳に直接、訴えることのほうが、はるかに確実に意思は伝わると思うのです。


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