| 毎度のことだがこの時期、新年号にもかかわらず新年に発行されないので新年の挨拶をすべきかどうかは悩ましいところだ。
しかし、これほどスピードが要求される時代なのに2月になって「おめでとう」もないものだ…いややっぱり形だけ、「おめでとうございます」。
いきなり弱気でスタートしたコラムだが日本経済は強気だ。日経平均株価は昨秋ころから急上昇し、REITや外資の買い付けによる首都圏の地価高騰はまさにありし日のバブル再来だという意見もある…。
1980年台後半のいわゆるバブル景気は、プラザ合意による当時の日本の対外黒字抑制対策による為替操作や国全体の成長期待、政策による過剰なマネーサプライの失敗などが複雑に絡んだ異常な資産インフレであったとされており、その後のITバブル(イットと呼んだ首相もいたなぁ…)も含めてどちらかというと17世紀オランダのチューリップバブルに近い妄想的な経済狂想曲であった。(今もそんな国がありますが)
しかし今回の株価上昇・景気回復(実感ないけど)は国債の乱発により長引かざるを得ないゼロ金利の影響もあるものの、長年貸し渋りなどに苦しめられながらも、世界に名だたるKAIZENで這い上がってきた「ものづくりニッポン」の底力だと個人的には拍手を贈りたい。
確かに外資が投入されたことによる活力の影響が多分にあるが、外資が魅力的に思う企業が存在しているからこその現状であり、今話題のIT長者達(ラ●ブ●アを除く)の企業と過去のITバブル紳士の企業では全く財務内容が違うことも大きなポイントだ。お上のおかげなどではないのは誰もが認めるところだろう。
話は尽きないが「たけだ」は経済誌ではないのでこの辺にしておこう。
ところで、こんな時代に逆行するかのように今年4月の診療報酬改定では全体で3.16%、診療報酬単体で
1.36%の減額という未曾有の事態が決定した。
「なんだたったそれだけか」という人は耳の穴かっぽじって聞いてほしいし、興味のない人はページをめくってほしい。
一般論では高齢化による医療費の自然増が年間3%、私たちのようにキチンと運営している病院では日々のリスク管理、システム運営等の見えない部分にも多額の費用が発生する。さらに昔はレントゲンと心電図さえあれば患者さんも満足してくれたが、今の時代の病院では最新機器はあって当然、つまり初期投資額が年々増加している。
ついでに国内インフレ率まで考えると、近年約10年のデフレがあったにもかかわらず1980年以後2001年までの間をチマチマとMUJIの電卓で複利計算すると
1.305倍となる。
対して病院初診料は23年間で1.76倍。これだけ医療技術が進歩して診断率・治療成績が上がっても国からの評価は23年前の医療内容とあまり変わらないということだろう。心電図検査にいたっては23年間全く変わらず。ついでに言うと床屋料金は約50年間で50倍。教科書的によく出てくるインフレ劣等生(優等生?)の鶏卵の価格と同じ土俵に立てるのは生化学検査くらいしかいないだろう。
ここは是非勇気ある政府官僚のセンセー方には立ち上がって「私は23年前の医療のみしか受けない!」と宣言していただきたい。
…まじめな話、これらを踏まえると公示された数字以上の厳しい現実に私などは立ちくらみを起こす毎日だ。(風邪?)
すでに現時点で経営に行き詰まった病院の倒産、統廃合を余儀なくされた国公立病院はさほど珍しいニュースではないし、今回の改訂ではその数は右肩上がりに上昇するだろう。
最近の某N経新聞(取材のない病院ランキングで有名な)では診療報酬担保の高利貸しによる病院乗っ取りまでが話題になるほど医療経営にとって困難極める時代が到来した。
我々がこうした日本の医療にとって未曾有の厳しい時代の中で生き残るためには、愚痴を連ねたり、制度の網をかいくぐったり、奇をてらったりするのではなく、「良質な医療の提供をムリ・ムダなく行う」という基本に立ち戻る必要がある。
(もちろん日本の医療にとって最大のムリは民間病院と競合しながら年間6000億円の一般会計充当を国から受けている約1000もの公立病院を存続させる意義だが、これはエライ方々のいろんな事情があるのでしょう。)
個々の意見はあるだろうが、私は良質な医療とは特別に派手な行為を指すのではなく、一般的な疾患を高率に良好な成績で治療することであると思う。
野球で例えれば、たまに大当たりするバッターを集めることではなく、安定した出塁率の選手で固めるようなものということだ。
つまりそうした地味で安定した成績を残すために必要なのは、派手な一人の千両役者ではなく、たとえスタッフが入れ替わったとしても継続的に安定した成績を残し続けるシステムの構築と継続したムダの排除であり、それこそがクリティカルパスの普及と言って良いだろう。
この意見を捉えて「個人個人は全て違うんだから医療の世界では通用しない」とか「いや、それじゃ没個性だ」とか反論する医療者は当院にはもう存在しない…と思
う。…もしいれば当院・高橋部長のお説教を受けに行ってください。
先進国の医療ではクリティカルパスの利用は当たり前だし、むしろ使用率の低い病院は何らかの問題があるとみなされる。そして治療成績よりも医療者の個性を求める患者さんはもちろんいない。
また医学的根拠のない過去の慣習を漫然と続けることは、患者さんに不利益をもたらさない程度の行為であったとしても、指示した側の安心感と引き換えにスタッフの労力や資源のムダを育むだけのものということも肝に銘じておきたい。
地獄の底から這い上がってきた日本の企業の成功も、KAIZENを繰り返してムリ・ムダを省くことに最も力を入れてきた。
「Small Baseball」を提唱してワールドチャンピオンになったW・ソックス。堅実野球で日本王者になった千葉マリーンズ。
こうしたスタイルが成功しているのは決して偶然ではないだろう。
私たちもKAIZEN&Small Styleを羅針盤として厳しい荒波を乗り越えて行きたい。
(でも本当はまず政治をもっとKAIZENしてほしい…)
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