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アスニー山科講座

アスニー山科(JR山科駅前)では、武田病院グループスタッフによる講座を開催しています。 このページでは、開催された講座内容を掲載しておりますのでご利用ください。

アスニー山科 2006年3月29日(水) 顔写真
武田総合病院 直腸肛門科部長
枡本 博文
「痔疾について」

▽ 痔は第二の国民病

(第一の国民病は虫歯)
ある大学の調査では、日本の成人1万人のうち、約75%が痔の経験があった。
症状の程度の差はあるが、4人のうち3人は痔主。

● 痔の男女比
 社会保険中央総合病院大腸肛門センターにおける、外来の統計では、
  →痔核、裂肛、痔瘻の順に多い
   ※裂肛は女性に、痔瘻は男性に比較的多い(痔核に関しては男女の差はない)

● 痔の三大疾患
<痔核・裂肛・痔瘻>
歴史上の人物も痔を患っていたとされる
 ・痔核……ナポレオン、野口英世
 ・裂肛(れっこう)……松尾芭蕉、乃木希典
 ・ 痔瘻(ぢろう)……夏目漱石、ルイ14世

●肛門のしくみ
(消化管)口腔 → 食道 → 胃 → 小腸 → 回腸 → 大腸 → 直腸 → 肛門
全部あわせて6メートル
食べ物が口から入り、肛門から出てくるまで約1日半くらいかかる

● 直腸・肛門について
直腸と肛門のつなぎ目にあるのが「歯状線」
この歯状線をもって肛門とするが、歯状線より1cmほど上までを肛門管という。
歯状線の横には肛門小窩という小さな穴が開いている。(1〜15個)
※ 誰でも痔になる素質をもっている。

● 内痔核の組織
粘膜
粘膜固有層
粘膜筋板
粘膜下層
筋層
上から下の順にいくつもの層が重なっているので、肛門を締めることができる

● 歯状線と痛みの分布
歯状線よりも上は、自律神経支配となり、痛みを感じない。
それより下は非常に敏感で、少しのことで痛む。

● 肛門部の筋肉
内肛門括約筋と外肛門括約筋があり、外肛門括約筋だけは自分の意思で力を加えることができる。

▽ 痔の発生原因

(1)直腸、肛門の血行障害により発生するもの(血管が腫れている)
(2)比較的太い便などの排便に起因するもの
(3)細菌の感染に起因するもの

 (1)痔核
  ・ 内痔核……歯状線より上にできる
  ・ 外痔核……歯状線より下の皮膚にできる

  <内痔核の程度>
   1度 軽度。出血するまで気がつかない。
   2度 排便すると肛門から出る。排便が終わると元へ戻る。ひどくなると痛みが出る
   3度 痔核が元へ戻らなくなる。指で押し込まないと戻らない。
   4度 指で押し込んでも入らない

 (2)裂肛
  硬い便などの排泄で裂ける。歯状線より下にできるので痛む。
  朝排便して、お昼ごろまで痛いことも。
 ・急性期の裂肛……発生してから数日から一週間程度なら、たてに裂ける。薬で治る
 ・慢性期の裂肛……発生後、数ヶ月から数年たつと、傷口の周囲が硬くなり、繊維化。痛みも長びく
   ※ 悪化サイクル
   排便時の痛み → 排便抑制 → 便秘 → 糞便の膨大・硬化 → 排便時の痛み

 (3)痔瘻
  歯状線にある肛門小窩という小さな穴に、大腸菌などが入り、炎症を起こす。
  痔瘻ができる前に、肛門周囲膿瘍ができる。

▽ 肛門の診察
・ 内診
・ 視診、触診、指診、怒責診(しゃがんだ状態で診る)
・ 肛門鏡
・ 直腸の内視鏡
ほとんどの場合、以上診察で診断がつく。
そのほかとしては、
・ 注腸
・ 肛門管超音波
・ 直腸肛門内圧測定
・ CT
・ MRI
▽ 内痔核の治療法

 ・ 保存療法……生活療法、薬物療法、物理療法
 ・ 手術療法
 ・ 中間的療法……硬化療法、PAO(パオスクレー)、消痔霊(ジオン)

● 手術
痔核を切除するのがスタンダード
武田総合病院では2001年から超音波メスも導入(ハーモニックカルペル)

【内痔核嵌頓(かんとん)症例】
核が外へ出て、それを肛門括約筋が締め付けてうっ血。
急に出血したりするので、手術の際には入院が必要。
鎮痛剤を飲み、局所麻酔をして術後の痛みを少なくする。

●痔核を直接切除しない新しい方法(PPH)→ヨーロッパでは主流
サーキュラーステイプラーによる、直腸粘膜下だけをリング状に切り取り、はさみ取る。同時に機械がホチキス状のもので止めてくれる。
痔を養っていた血流が止まり、痔核を消滅させる。
 ※粘膜だけをはさみ取るが、半数の数例で筋層も少し取れてしまう。
 ※ 3cm以上の痔核が出ている人には使えない。
 ※ 慣れている病院の方がよい

●硬化療法
 ・ PAO(パオスクレー)……油性
  出血には効果があるが、脱肛には効きにくい。
 ・ 消痔霊(ジオン)……水溶性
  1970年代から中国では使われていた。
   → 消痔霊にはトリクロロブタノールを含むが、日本では承認されていないため改良し、ジオンとして売り出した。手術並に効果がある。
     ↓↓
   硫酸アルミニウムカリウム、タンニン酸が主成分。
   迅速な出血症状の改善
   痔核の硬化、退縮(脱出・出血症状の消失)
   手術が必要なくなるとも言われている
専用の肛門鏡と、注射を用いて注入する
一つの痔に対して4回ずつ注入。また、注入する量も細かく決められている。量を間違うと合併症を起こす危険性がある。
 ※筋層に注入してしまうと壊死を起こしてしまう
内痔核分類法(Goligher)では、ジオンは第2度から4度。嵌頓症例では使えない。
 ※ジオンの発売前の試験
  ジオン注80例、手術85例において
  28日後の脱出消失率は、ジオン注で94%、手術で99%
  1年後の再発率は、ジオン注16%、手術2%

■ジオンの合併症■
筋層内投与→直腸壊死
量を間違える→痔核壊死
場所を間違える→ほかの場所に影響がでる

● ジオン注35例の入院期間……80%が2日以内
ジオン注33例の成績は、ほぼ100%の人が満足
副作用はあるが、重篤なものはない。
2、3%で血圧低下が起こるので、きちんとした設備のあるところで受けるのが望ましい。

● 内痔核の治療法の選択
 ・ 保存療法……1度、2度
 ・ ジオン……2度、3度、4度
それ以外ではLEやPPHで。
嵌頓は手術が必要。

▽ 外痔核の治療法
外来の局所麻酔で、血のかたまりを抜く。
長続きする病気ではない。
▽ 裂肛の治療
慢性化していなければ、8割以上は薬や生活改善で治る。
治らない場合は、皮膚弁移動法(硬くなったところを切り取り、横に縫い合わせたあと、皮膚を移動させる)も。
▽ 痔瘻の治療

外側から治療しても、菌が入ってくるところと、中にある菌のたまり場所を治さないかぎり、完治しない。三大痔疾の中で一番やっかい。

● 痔瘻結紮(けっさつ)療法
瘻管に通したゴムの力で括約筋が少しずつ切れて行く。
  → 一週間から二週間通院してもらいながら、ゆるんだゴムを締め直す
  → 一カ月から二カ月の間にゴムが自然に脱落して治る

!!大腸がんが増加!!
  痔だと思って、自分で治療していると、大腸の病気だったということも。

○痔を予防しましょう
 ・ お尻を清潔に
 ・ トイレに長時間座らない
 ・ お尻を冷やさない
 ・ 長時間座らない
 ・ 刺激物やお酒を控える

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