肝臓のはたらきと仕組み
○肝臓
・肝臓の位置は、おなかの右の横隔膜のすぐ下
・人体最大の臓器で、重さは約1.5kg。左葉(小)と右葉(大)に分かれている。
・ほかの臓器とは違い、二つのルート(肝臓動脈と門脈)から血液が入ってくる。門脈からの血液量の方が多く、腸から大量の栄養分を運んでいる。
○肝臓と胆管
肝臓の中に胆管がある。
肝臓で作られた胆汁が胆管を通り、(胆のうはその途中にあり、ため池のようにぶら下がっている)膵臓を経て、最後は十二指腸へ。
※ 胆石は胆のうや胆管にできる。胆管が胆石で詰まった場合は、膵臓の管も影響を受けるため膵炎を起こす。
○肝臓の働き
・総合化学工場……タンパク質、コレステロール、脂肪、凝固因子などを作る
・処理工場……アンモニア、服用したお薬、アルコールなどを代謝し、解毒。不必要なものは胆汁へ。
・貯蔵庫……グリコーゲンが肝臓の中でたくさん蓄えられている。必要な時に糖に分解されて全身に送られる。
○「沈黙の臓器」
予備能力が大きく、少しのことで音を上げない。
↓↓
症状は最後にならないと出ない。症状が出たときには重症。
●「沈黙の臓器」が沈黙をやぶったら…
倦怠感、こむらがえり、浮腫(むくみ)、腹水、黄疸、出血傾向、肝性脳症(意識障害)、食道・胃静脈瘤など
○肝臓の検査
・血液
・画像診断(エコー、CT、MRI)
・肝生検
●血液−GOT、GTP(肝逸脱酵素)の数値を検査
GOT、GPTは肝臓の細胞に傷がつくと、血液中に現れる。
特にGPTはほかの臓器にはあまり含まれていないので、肝細胞の状態が分かる。
この検査では「肝細胞のこわされ度」をみる。
※ほかにも、ALP(胆道系酵素)、γGTP(飲酒マーカー)、ビリルビン(黄疸の原因)などがある。アルブミン、コリンエステラーゼ、総コレステロールなどは、化学工場としての生産能力がどれだけ残っているかを示す数値。血小板は肝硬変になると減少。
肝臓の病気
○肝臓に悪影響を与える代表的な因子
ウイルス、お酒、お薬、生活習慣病など
○代表的な肝臓の病気
・脂肪肝
・急性肝炎
・慢性肝炎
・肝硬変
・ 肝臓がん(肝細胞がん、転移性がん)
●肝炎
慢性肝炎……原因はウイルスやアルコールなど。半年以上、肝臓の炎症が持続。
●肝硬変
慢性肝炎が進行すると、肝細胞が減り、肝臓が繊維化。
肝臓の機能を果たさなくなる。
●薬剤性肝障害
・中害性(薬自体による障害)
・特異体質性(薬アレルギー)
原因としては、抗生物質や沈痛解熱剤、睡眠薬、漢方薬、髪を染める薬品、サプリメントなど。
※ どれが原因になっているのか判別しにくい。複数のお薬を服用している場合、原因として疑わしいお薬から中止していく方法がとられる。
※ 中国製やせ薬での死亡例あり。商品名「茶麦減肥こう嚢」「せん之素こう嚢」「御芝堂減肥こう嚢」などに注意。外国製品には要注意。
●急性ウイルス性肝炎
日本では年間20万人が発症。
A・B・C・D・E型肝炎ウイルスなどがある。
《A型》
・急性肝炎の半分以上を占める。経口感染。
・患者さんの糞便→下水→河川→カキ→生で食べると発症
・急性肝炎のみであり、慢性化することはない(0.5%は劇症肝炎に)
※中高年以上ではこの抗体を持っている人が多い。清潔な生活になり、抗体を持っていない人もいるため、そういった人が高齢になり発症すると重症化してしまうことがある。
※ワクチンがあるので、抗体を持たない人は衛生状態の悪い国などへ行く際に摂取を。
《E型》
・日本では少数。
・鹿、猪、豚などのレバーから感染。
・妊婦さんで感染すると死亡率が高いため注意。
《B型》
・非経口感染。
・血液、だ液、尿、精液などから感染。
・成人感染は急性肝炎を発症するが、すぐに治る。(しかし100人に1人の確率で劇症肝炎になる)
・以前は母から子への垂直感染が多かったが、現在は対策がとられている。
※ もし感染してもワクチンがある。35歳ぐらいまでに自然排除する場合も。
《C型》
・結核に次ぐ、「第二の国民病」と言われる。日本では200万人以上。
・血液を感染経路とする非経口感染。
・輸血、医療従事者の注射針での事故、覚せい剤や入れ墨による感染。
・母児感染は5〜10%。
・急性肝炎発症後は高い慢性化率。
・ワクチンあり。!!こんな人は一度検査を!!
・過去に肝機能以上を指摘されているが、原因不明。
・きちんとした抗体の検査がされていなかった、1992年以前に輸血や大手術を受けた方。
・1994年以前に血液製剤を投与された方
※肝炎ウイルスに感染しながら、気がついていない人は約185万人。
勤務されている方は健康保険組合に、そのほかの方は市町村へ申し出れば検診可能。
C型肝炎
感染→急性肝炎、または無症状→うち7割の人が10〜20年間の慢性肝炎に→うち3割の人が肝硬変に→25〜35年後には肝臓がんに
○肝臓の状態を示す二つの要素
GOT、GTP……肝細胞のこわされ方を示す(支出)
血小板……肝臓が今までどれだけ作り直されたかを示す(貯蓄)
○治療法
・ウイルスを無くす
・インターフェロン
・肝臓の作用を守る薬
● インターフェロン
もともと体内にある物質だが、これを大量に投与することで肝炎ウイルスを直接攻撃する。中にはまったく効果のない方も。
●PEGインターフェロンとリバビリン
・新しい治療法。PEGインンターフェロンを週一度注射し、リバビリンは一日2回内服。最初の2週間は入院し、残りは週一度の通院。
・これまでのインターフェロンに比べて、効果が持続。これまでのインターフェロンで治りにくかった1b抗ウイルス病の患者さんにも効果があることが分かっている。
・副作用としては、かぜのような症状、気分がふさぐ、体がだるい、髪が抜ける、血小板や白血球の減少など。自覚症状のある副作用については、インターフェロンに比べPEGインターフェロンの方が軽い。
・リバビリンの副作用は貧血。
●繊維化の段階
軽度(発がん率0.5%/年間)
↓
中度(発がん率1〜2%)
↓
重度(発がん率3〜5%)
↓
肝硬変(発がん率8%)
↓
肝がん
※繊維化が始まると肝がんに注意。逆に言えば、がんに進展するという予測が可能なので、画像などでの検診を欠かさなければがんの早期発見が可能。
● インターフェロン少量長期投与療法
何らかの原因で大量のインターフェロンの投与ができない方には、少量のインターフェロンを長期にわたり投与する方法がある。
肝臓の鎮静化(GOT、GPTの正常化を目的とする)を図る。ウイルスを消滅させるのではなく、肝機能を保つ方法。
※インターフェロンがまったく効かない方には
肝庇護療法。いくつかのお薬などもあるのであきらめない。
肝臓がん
・日本は世界でも肝がんが多い。
・ 胃がんや肺がんに次ぐ勢いで、年間34000人が発症。
・ 8割がC型肝炎患者。B型肝炎は1割。
・ インターフェロン治療を行えば、ウイルスが消えた場合、発がん率が下がる。ウイルスが消えなくても発がん率が正常化することで発がん率が低下する。
・ がんを発症する方は慢性肝炎や肝硬変を発症している方が多いので、がんだけをたたく治療ができない。
・ 一カ所だけでなく、いろいろな個所にがんができる。
※ 早期発見をし内科的な治療を行うことが大切!!
お酒の害について
<アルコール性肝障害>
・ アルコール性脂肪肝
・ アルコール性繊維症
・ アルコール性肝硬変
・重症型アルコール性肝炎
※ これらは飲酒期間と飲酒量に比例。個人差あり。日本人の約半数がアルコールを分解する酵素・アセトアルデヒドを持っていない。ウイルス性肝炎を持っている人になるとアルコール性肝障害の発症率が上がる。
●アルコール摂取量の計算方法
アルコール(g)=飲酒量(ml)×度数×比重(0.8)
※各種アルコールの度数
缶ビール 5
ワイン 12
日本酒 15
焼酎 25
ウイスキー 40
※慢性的なアルコール肝障害を起こす量はエタノール1日60g以上
日本酒では2.8合、焼酎1.7合。常習飲酒者はこの量を5年間飲んでいる人で、アルコール性の脂肪肝になる危険性がある。
○酒は百薬の長
まったく飲まない人に比べて、上手に飲んでいる人の方が死亡率が低い。たくさん飲めばもちろん死亡率は上がる。
《適正飲酒5か条》
○酒は飲むもので、飲まれるものではない
○楽しくおいしく飲もう
○自分の適量を知り、マイペースでゆっくりと
○人に酒の無理強いをしない
○肝臓も深夜残業禁止。週休2日。
!!定期的な検査を!!
脂肪肝
原因は生活習慣病。最近は若い人にも増えている。
●非アルコール性脂肪肝(NASH)
・まったくお酒を飲まない人に起こる脂肪肝。
・C型肝炎やアルコール性の肝障害についで頻度が高いと言われている。
・診断方法は肝生検のみ
・50〜60代の方に多い
・ほかの肝機能障害がない
・生活習慣病を合併
・ほとんど無症状
・血液検査ではわからない
↓
この病気が怖いのは、肝硬変になっていくこと
●メタボリックシンドローム
高血圧、高脂血症、肥満、糖尿病、動脈硬化症などを併発。
内臓脂肪が多くなってくると危険。
慢性肝疾患と日常生活
○運動……安静が良いとされたのは過去のこと。肥満を避けることが重要。もちろん重症の方は安静が必要ですが、ほとんどの方は適度な運動が必要。(筋肉は肝臓と同じような働きをするため)
○食事
・ 糖尿病食と同じく、バランスの良いものを。
・炭水化物や穀物、食物繊維、緑黄色野菜を取る。
・炭水化物>野菜>タンパク質>脂肪の順で量を考えて取る。
・決まった時間に規則正しい食事を。
・基本的にアルコールは避ける
・C型肝炎の方は鉄分に注意する。
※肝硬変まで進んだら……
・塩分はむくみのもとなので塩分制限。(うどん、ラーメン、パンなどは控える)
・夕食のあと朝食までの空腹が悪いということが分かってきたため、就寝前に糖分を取るようにする。夜食のすすめ。
・分岐鎖アミノ酸を取る
●家庭などでの肝炎ウイルスの予防
・ほとんど感染しない。
・出血時の血液の処置は自分で。
・一緒に入浴するのは問題ない。
・食べ物の口移しは禁止。
B型肝炎の人は性生活で感染の可能性があるので、パートナーにはワクチン接種を。 |