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アスニー山科講座

アスニー山科(JR山科駅前)では、武田病院グループスタッフによる講座を開催しています。 このページでは、開催された講座内容を掲載しておりますのでご利用ください。

2005年2月23日(水)
医仁会武田総合病院 形成外科部長
前田健志
加齢と皮膚の変化(シミから皮膚癌まで)

皮膚の構造

本題に入る前にまず、ごく簡単に皮膚の構造をお話します。皮膚は表面から表皮、真皮、皮下脂肪という順に並んでいます。

表 皮
表皮の約9割が角化細胞(最後は垢となって剥がれ落ちる)、残りの約1割がメラニン細胞で厚さは平均0.2mm 。表皮最外層のパイ皮のように何十層にも重なった構造が、外部から微生物が入りにくい働きをしています。

表皮の構造
表面から角質層(外部からのバリアと水分保持)、透明層(手掌、足底のみ)、顆粒層、有棘層、基底層の層をなしています。それらは、角化細胞が基底層で分裂し、徐々に押し上げられて出来ます。

メラニン細胞の働き
メラニン色素を作って、回りの細胞に渡します。メラニン色素は基底細胞の核や真皮を紫外線から保護するために作られます。

※紫外線は基本的に体にとって有害です。もともと紫外線が少ない北欧などはくる病になる可能性があると言われていますが、栄養状態の良い今の日本では特に日光浴などせずともその心配はないと言われています。

真 皮
真皮の厚さは平均2〜3mm。細胞の集団である表皮に対して、真皮はコラーゲンなどのたんぱく質繊維や基質(matrix)など細胞以外の成分が主体です。70%はコラーゲン(繊維性たんぱく質、皮膚の強靭さを担う)、2%はエラスチン(たんぱく質、皮膚の弾力にかかわる)、他に多糖類やたんぱく質が水分保持しています。

注意すべき皮膚疾患

脂漏性角化症
いわゆるシミやイボと言われています。部分的に表皮で増殖するもので、皮膚の年齢的な変化です。形は色が薄くてぺたっとしたもの、黒くてぼってりしたもの、小さく多発しているものなどいろいろあります。局所麻酔をして削ればきれいになります。

基底細胞上皮腫
皮膚の悪性腫瘍の一つ。最近では、あざと腫瘍の中間的なものと言われています。赤ちゃんのときから細胞はありますが、できものとして現れるのは中年以降。他の臓器への転移は非常に少なく、切除し、皮膚移植など行えばほとんどは完治します。

ケラトアカントーマ
急速に大きくなり、真ん中が崩れて潰瘍やかさぶたになります。半年〜1年経過を観察しているうちに自然治癒することもありますが、皮膚癌との区別が難しいため、初期の段階で細胞を検査し判別することが多いです。

日光角化症
紫外線(UV)の影響により、真皮のコラーゲンなど(結合組織)の変性を基盤としてできる前癌病変の1つです。周囲に炎症性の赤みが出ます。しばらく治らないびらんや湿疹があれば、皮膚科にかかってください。

ボーエン病
細胞としては癌細胞ですが、数年以上表皮にとどまっています。数年から十数年後に広がり、進行すれば有棘細胞癌となって転移する場合もあります。皮膚だけでなく粘膜にもできます。

有棘細胞癌
代表的な皮膚癌の一つで、扁平上皮癌とも言います。表皮が慢性的にダメージを受けていて細胞の栄養障害があるような場所にできやすいです。例えば、今までの前癌病変、慢性潰瘍、放射線皮膚炎、やけどの傷跡(特に何年も潰瘍であるところ)にでき、リンパ節転移や内臓転移をしやすいです。

悪性黒色腫
初期はほくろに似ているが、形や色の濃さも不規則で、周囲に黒いしみ出したようなものもあります。比較的早く大きくなり転移するため、早期に治療を開始する必要があります。まれに悪性腫瘍に対する抗体(免疫)ができ、消えていくものもあります。

紫外線について

皮膚のダメージを予防するためには、紫外線と乾燥の対策が必要です。紫外線は光の波長でABCに分けられます。C波はオゾン層によって上空で吸収されていましたが、最近はフロンなどによってこのオゾン層が破壊され、地上に届くようになっています。特に南半球のオーストラリアでは、白人の発癌率は、北欧の白人に比べて 100 倍、 1000 倍とも言われています。

実例
長年農作業されていた80歳の方の顔にはシワ、シミが多くみられ、紫外線予防と保湿をしていた 93 歳の方には少ない。一方、各々の方の太もも皮膚は日光にあたっていないので、年令相応である。(故にシミ、シワは個人差ではなく日光による)

紫外線の皮膚に及ぼす影響

UV-A(日焼けサロンなどで使用)
照射直後に即時黒化します。長期的には真皮深部組織を変形させ、シワ、タルミの原因になります。

核は1個の細胞に1個含まれます。核の中にはDNA(ゲノム)など細胞の設計図であり司令塔です。とても大事な情報が含まれていますが、UV-Aは、細胞内にあるミトコンドリアの遺伝子をも傷つけます。窓ガラスを通し、雨の日の屋内でも注いでおり、朝から夕方まで対策が必要です。  

UV-Aを浴びると、メラニン細胞でメラノソーム(メラニン色素)が作られ、表皮の基底細胞に分配されます。メラノームは細胞の核の上に集まり、この核をUVから守ります。

UV-B
照射直後は紅斑(日焼け)で、数日すると徐々に黒化します。長期的には色素沈着(シミ、そばかす)、真皮上層が変性し、皮膚癌の原因にも。B波が多い南の地域はシミができやすく、美人で有名な秋田県は、日本一日照時間が短く、湿度が高いと言われています。

UV-C
C波はB波よりも皮膚癌に関係しています。

化粧品などの表示
SPF・・・UV-Bをカットする強さ
PA・・・UV-Aをカットする強さ (日常生活では、SPF15前後ぐらいが使いやすい様です。)  

環境と紫外線

オゾンホール拡大
南極上空で急激にオゾンが減少するオゾンホールは、南半球が春になると超低温の雲にとじこめられていた塩素原子が解放されて生じ、年々拡大しています。オーストラリアでは子供のときから紫外線対策をしています。南半球に旅行の際は、C波をカットする対策をお忘れなく。

フロンとオゾン層破壊
オゾン層ではオゾンと酸素分子が合成と分解を繰り返しており、その際に有害な紫外線が吸収されています。フロンは化学的に安定な物質だが、上空で強い紫外線によって分解され、このとき生じる塩素原子は1原子でもオゾンを次々と破壊しています。そのため微量のフロンでも規制しなければなりません。

生命の起源から原始物の進化の様子
多細胞の高度な生物が現れるのにオゾン層が必要でした。オゾン層がなければUV-C を含む強い紫外線がじかに地上に届き、今の生き物はいないだろうと言われています。

皮膚の性質を変える要因

生活環境、機械的刺激、微生物、遺伝、栄養、免疫、ホルモン、精神的など外的、内的要因が関係していると言われています。

なかでも紫外線は影響が大きく、当たると表皮や真皮中にサイトカインが分泌され、近くの毛細血管や、コラーゲンを合成する繊維芽細胞、コラーゲンの分解・合成にかかわる白血球などにも作用します。

シワ対策に有用性が報告されている物質と考えられる作用点

ビタミンA酸−皮膚を厚くする。
ビタミンE−活性酸素を和らげる。
ビタミンC−活性酸素を和らげる。コラーゲンを合成。
エストラジオール−線維芽細胞活性。
αヒドロキシ酸−角質細胞剥離。

例えば、ビタミンAを塗ると、徐々にシワが薄くなります。顕微鏡で見ると、角質層が少し薄くなって、表皮と真皮は厚みを増しているのがわかります。

保 湿

乾燥は、できものや乾皮症の原因にも。紫外線よけ以外にもスキンケアが必要です。

乾皮症とは?
別名皮脂欠乏症。 皮脂および汗の分泌が減少することや皮膚の保水力の低下などにより皮膚が異常に乾燥し、外部から細菌や微生物が侵入し、炎症を起こしたものです。人体の7割以上は水分であるため、水分保持は生命維持には絶対不可欠です。角質層の役割(微生物、物理的保護、化学的保護、体の水分保持)は非常に重要な役割を果たしています。

角質保湿成分

肌の保湿で大きな働きをしているのが、角質保湿成分の細胞間脂質、NMF、皮脂膜。これらは全て皮膚の細胞からつくられています。

細胞間脂質
主成分はセラミド。細胞の間にあります。最近いくつかの化粧品、洗顔料、入浴剤等に含まれる。水分保持、水の透過を制限、刺激物質の侵入をブロック。バリア作用の強いセラミドは、リノール酸などの必須脂肪酸が必要です。それが欠乏すると、角層のバリア機能が低下し、肌荒れやかさつきの原因になります。必須脂肪酸は食事からしか摂取できないため、偏食や不健康なダイエットは肌を傷めることになります。ご注意下さい。

NMF
主成分はアミノ酸。角質内にある天然保湿成分(ナチュラルモイスチャライジングファクター)です。

皮脂膜
皮膚の表面にあり、皮膚の保護、滑らかさ・輝き、水分蒸発を防ぐ。皮膚を弱酸性に保ち、アルカリの中和や細菌の増殖を防止します。

スキンケアの目的
  • 汚れを落とす。
  • 不足した成分を補う。
  • 皮膚を保護する。(乾燥、紫外線など)

乾燥が強まる季節
秋冬はしっかり保湿でシワを予防し、外的刺激から守ります。セラミドが含まれるローションを塗ると、セラミドが細胞間に入り、水分を保つと同時にバリアの役割も果たすアミノ酸は体だけでなく肌にも良いのです。

美白について
メラニン色素が増えるのは、細胞の核を守る防御反応である。ところが、美白というのは、その防御反応を取ることになるので、例えば、日傘をさしたり、UVカットのクリームを塗るなど、UVから守る対策が必要です。

皮脂
人の祖先の体毛は表面を被い、摩擦を減らし、撥水効果(毛や羽毛が水を吸うのを防ぐ)役割をしていました。現在の人は軟毛化(産毛)しているが、皮脂腺は残っており、絶えず分泌しています。

肌タイプの分類

乾燥肌、普通、脂性肌など皮脂の量で分ける方法と天然保湿因子、皮脂膜、細胞間脂質などの機能を基準にした方法があります。

若年肌・・・皮脂が多く、未成熟で不安定な肌です。

成年肌・・・バランスは取れるが、個人差、部位差が大きく、多様性があります。

熟年肌・・・皮膚の機能が全般的に低下。角層細胞脂質(セラミドなど)、NMF、皮脂膜などすべてを補い、UVや乾燥から保護する必要があります。

個人、部位、年齢、季節、体調などにより肌の状態が異なるので、スキンケア用品や化粧品は自分に合ったものを選んでください。

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