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アスニー山科講座

アスニー山科(JR山科駅前)では、武田病院グループスタッフによる講座を開催しています。 このページでは、開催された講座内容を掲載しておりますのでご利用ください。

2004年10月27日(水)
医仁会武田総合病院 総合診療科 部長
大野仁嗣
「発熱について」
発熱・・・総合診療科において多い症状で、大抵の熱は2〜3日から1週間で自然に治まる。
しかし、中には見逃せない病気が潜んでいることもある
 
発熱患者の診察・・・原則として、頭の先から足の先まで観察する
発熱患者の診察に際し最も重要なことは、現病歴、家族歴を慎重かつ詳細に聴取すること。特に、随伴症状、熱型、薬の服用の有無、海外旅行歴、動物との接触、他医での治療の有無、家族性や先天性疾患の可能性などに注意する。
随伴症状としては、発疹・関節痛・リンパ節腫脹・髄膜刺激症状・呼吸器症状・消化器症状・尿路症状などに注意する。
理学的所見は頭部から下肢へと見落としなく正確にとる。
病歴と理学的所見から必要と思われる検査を施行する。
原則として熱型を観察するが、重症感染症の可能性が高い場合は直ちに治療を開始する必要がある。
→診察により、経過観察、検査、治療、入院などが決まる
 
発熱患者の検査・・・病気が疑われる人のみ
スクリーニング検査
−血算・白血球分画、CPR(発熱マーカー)・血沈、生化学検査(肝臓・腎臓など)、尿検査など
細菌検査(検鏡、培養、感受性検査)
−血液、尿、喀痰、便、咽頭、化膿巣、髄液、骨髄液、胸水、腹水、胆汁など
胸腹部レントゲン検査
−原則として胸部2方向を撮影、腹部レントゲンは立位、臥位を撮影
腹部超音波検査
−肝・胆・膵・腎・脾・骨盤腔臓器
CTスキャン
−胸部、腹部、病変の疑われる臓器・組織
シンチグラフィー
−骨シンチ、腫瘍シンチ(ガリウム)など
試験穿刺
−胸水・腹水などが認められる場合は、診断確定のために試験穿刺する
※医仁会武田総合病院では、入院患者さまに対して「経過処置記録表」を作成し、熱・脈拍・呼吸回数・尿量 ・排便・排尿・血圧・食事摂取状況などを記録し、何の病気か、治療がうまくいっているかを観察するのに役立てています。
 
■代表的な熱型
  特徴 主な疾患
弛張熱
※代表的な熱
(しちょうねつ)
体温の日差が1℃以上 最も低い体温でも
平熱には戻らない
急性上気道炎、細菌性肺炎、
マイコプラズマ肺炎、
膿瘍、敗血症など
間欠熱
(かんけつねつ)
高熱期と無熱期が交互に現れる マラリア、回帰熱
稽留熱
(けいりゅうねつ)
日差が1℃以内
※1日中発熱が続く
腸チフス、大葉性肺炎
Pel-Epstein熱 3〜10日間弛張熱が続き、次いで
3〜10日の平熱期に入り、発熱期と
平熱期を交互に不規則に繰り返す
ホジキン病
※悪性リンパ腫の一種
 
■不明熱とは?
Fever of Unknown Origin (FUO)
3週間以上にわたって原因不明の発熱が持続する
−しばしば38℃以上に上昇する
1週間以上の検査によっても原因が判明しない
−明らかな原因をもつ疾患は通常上記経過中に診断がつき、ウイルス感染症では発熱は消失することが多い
→その原因
感染症
−結核(粟粒結核・腎結核)、深部膿瘍(虫垂周囲膿瘍・肝膿瘍など)、細菌性心内膜炎、骨髄炎など
悪性腫瘍
−腎癌、肝癌(原発性、転移性)、悪性リンパ腫・白血病など
膠原病・血管炎
−SLE、若年性関節リウマチ、巨細胞動脈炎など
※側頭動脈炎やリウマチ性多発筋痛症は高齢者に多く、ステロイドホルモンを服用することで熱をコントロールすることが可能
その他
−アミロイドーシス、甲状腺機能亢進症、家族性地中海熱、中枢神経疾患、
psycogenic feverなど
 
FUOの40%が感染症、20%が悪性腫瘍、20%が膠原病・血管炎、10%がその他、10%が原因不明とされている
 
肺炎と市中肺炎
肺炎とは肺実質の急性、慢性の感染症炎症をさし、発熱をはじめとする自覚症状、炎症を示す検査所見、胸部レントゲン写 真上の新しい浸潤影などにより診断される。
市中肺炎とは一般社会生活を送っている人にみられる肺炎で、健康人に多いが、高齢者あるいは種々の合併症を有している人も含まれる。入院中の患者さまに合併する院内肺炎とは明らかに区別 される症状。
 
市中肺炎・・・細菌性肺炎と非定型(異型)肺炎
細菌性肺炎
−肺炎球菌、インフルエンザ桿菌など   −ペニシリン、セフェム系薬剤が有効
非定型(異型)肺炎
−マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラなど
−マクロライド、テトラサイクリン系薬剤が有効
肺炎はありふれた病気ではあるが、2種類あり、対処法も異なる。  細菌性肺炎は人にうつることはないが、非定型のマイコプラズマに関しては、しばし ば人にうつることがある。
 
マラリアの種類と特徴
熱帯熱マラリア・・・代表的なマラリア。
アフリカ、アジア、中南米の熱帯地域に分布し、潜伏期間は1〜3週間。発熱はほとんど毎日あり、脳症、腎症、肺水腫、出血傾向、低血糖、代謝性アシドーシス、肝障害など重症な症状をきたす。再発なし。
三日熱マラリア・・・代表的なマラリア。
世界各地の熱帯と温帯の一部に分布し、潜伏期間は10日〜4週。発熱は初めほとんど毎日でその後1日おき、症状は軽症、再発の恐れあるためプリマキンが必要。
卵型マラリア・・・発症は少ない。
世界各地にスポット的に分布し、潜伏期間は10日〜4週。発熱は初めほとんど毎日でその後1日おき、症状は軽症、再発の恐れあるためプリマキンが必要。
四日熱マラリア・・・発症は少ない。主として熱帯西アフリカに分布し、潜伏期間は10日〜4週。発熱は初めほとんど毎日でその後2日おき、症状は軽症、ときにネフローゼ症候群、再発なし。
マラリアは、ハマダラカ(お尻を上げて止まり、成虫の羽にはまだらの紋様がある)に媒介し、吸血により人体に進入する。肝臓で増えたマラリアは血液の中に入り(ここまでが潜伏期間)、赤血球に感染すると発熱し、体内でマラリアが増えていく。
 
腸チフス・パラチフス
腸チフス・パラチフスは一般のサルモネラ感染症とは区別され、チフス性疾患と総称される。
1999年4月から施行された感染症法では、腸チフス・パラチフスは2類感染症に指定され、患者、疑似症患者および無症状病原体保有者(保菌者)を診断した医師は、直ちに保健所長を通 じて都道府県知事に届け出るように決められている。
腸チフス・パラチフス患者、疑似症患者は第2種感染症指定医療機関への入院勧告、または入院措置の対象となる。
わが国の法律上の起因菌はそれぞれ腸チフスはSalmonella Typhi、パラチフスはSalmonella Paratyphi Aである。パラチフスB菌(Salmonella Paratyphi B)は、S.Javaとの鑑別 が困難な点から1985年以降パラチフスの原因菌から除外され、サルモネラ症として扱われるようになった。また、チフス菌、パラチフスA菌以外にもヒトにチフス症を起すサルモネラ属菌もあるが、これはサルモネラ症として扱われる。
 
−発症件数
チフスは経口感染で、チフスの入った飲食を口にすることで簡単に感染する。
現在でも、日本を除く東アジア、東南アジア、インド亜大陸、中東、東欧、中南米、アフリカなどに蔓延し、流行を繰り返している。わが国でも昭和初期から終戦直後までは腸チフスが年間約4万人、パラチフスが約5000人の発生がみられていた。そして、1970年代までには環境衛生状態の改善によって、年間約300例の発生まで減少した。その後さらに減少し、1990年代に入ってからは腸チフス・パラチフスを併せて年間約100例程度で推移している。そのほとんどは海外からの輸入事例で、海外旅行が日常化したことにより増加傾向にある。
 
−臨床症状
腸チフスとパラチフスの臨床症状はほとんど同じですが、パラチフスは腸チフスに比較して一般 的に症状が軽いのが特徴です。通常10〜14日の潜伏期の後に発熱で発症します。
▼第1病期: 段階的に体温が上昇し、39〜40℃に達する。3主徴である比較的徐脈、バラ疹、脾腫が出現する。
▼第2病期: 極期であり、40℃代の稽留熱、下痢または便秘を呈する。重症な場合には意識障害も引き起こす。
▼第3病期: 徐々に解熱し、弛張熱、腸出血をきたす。腸出血に引き続いて、2〜3%の患者に腸穿孔を起こす。
▼第4病期: 解熱し、回復に向かう。
第2病期あたりで診断がつかなければ、生命の危険につながることもあるため、迅速かつて的確な診断が必要となる
生化学的検査では、急性期には白血球は軽度に減少し、3000/mG近くまで低下する。GOT,GPTは軽度上昇する(200IU/L程度)。LDHも中程度に上昇し、1000IU/L以上となることもある。
 
その他の発熱・・・伝染性単核球症(ウイルス感染症の1種)
思春期以降、キスなどによって容易にEBウイルスに感染し、発症する。
1カ月程度の潜伏期を経た後、扁桃腺や全身のリンパ節が腫脹し、脾臓も腫大する。急性肝炎をきたす。
1〜数週間で自然に軽快する。
サイトメガロウイルスによる伝染性単核球症は中年以降でも発症することがある。
発熱は身体に異変が生じていることを知らせる警告灯です。
発熱の原因は極めて多彩ですが、感染症の頻度が圧倒的に高いです。
大半は数日から1週間で自然に解熱し、健康を取り戻します。  ウイルス感染症は必ず治る病気です。診断がつけば、対処療法で自然に治ると理解してください。
しかし、なかには原因(細菌感染?ウイルス感染?感染症以外?)を突き止めて、適切な治療を必要とすることがあります。
私たち医者は、治療が必要な本当の病気を見つけるのが仕事です。熱の症状の大半は経過を観察することで的確な診断がつきます。初回に処方された薬をのみきっても治らないからと、安易に病院を変えるようなことは避けてください。

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